短編
□目覚めたらもう一度
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俺のクラスの詩杏が体育の授業中に倒れたなんて聞いたから、授業中だってのに「自習!」と一言言い残し教室を後にして自分でも驚く位急いで保健室まで走った。
「詩杏!大丈夫か!?」
「あれ…坂田先生?」
俺が保健室に入るなり結野先生は驚いた顔をしたが「詩杏さんこっちですよ。」とベッドまで誘導してくれた。
「今寝てるみたいなの。」
とカーテンコールを開ければ顔を赤くして目を閉じている詩杏が居た。
凄く辛そうで何故だか抱きしめたい衝動に駆られた。
「熱があるのに無理して学校来ちゃったみたい。」
やれやれ、と困った様に結野先生は頬に手を当てた。
「結野先生―っ!」
いきなりドアが開いたと思えば新八の声がした。
「高杉君と土方君が喧嘩して山崎君が巻き込まれて怪我しちゃったみたいで来てください!」
溜息をついて「毎度すみません」と俺が頭を下げると、「慣れましたよもう。じゃあ私が保健室離れてる間詩杏さん頼みますね」と言って救急箱を手に持ち新八と一緒に保健室を後にした。
***
「―…あれ?、先生。」
周りが騒がしく目を覚ますと何故か居る筈の無い担任の銀八先生が居た。
「大丈夫か?」
片思いしている先生に心配そう顔を覗かれては勿論熱が余計上がるわけで。
「ちょっと頭痛い位です。」
視線に堪えられず顔を反らすとぶっきらぼうに答えた。すると横から溜息が聞こえる。
「熱有るのになんでそんな状態で学校来たんだよ?―…こんな大事な時なのに。」
3年生の晩秋と言えば受験勉強もラストスパートを迎える。こんな時期であるのに無理して学校に来た理由、そんなの一つだ。
「―…先生の授業があったから」
先生の顔が見たかった、先生の声が聞きたかったのだ。
固まったままの先生。
保健室内にどことなく重い空気が流れる。
弱っている時というのは危ない、直ぐに本音が出てしまう。
「ねぇ、先生手貸して?」
沈黙を破るようにそう言うと先生は手を差し出してくれた。その手を自分の頬に当てた。
「あれ…、手冷たく無い。というか寧ろ熱い。先生も風邪?」
先生の手の温度は私が想像していた温度よりとても高く、少し汗ばんでいた。
「ちげーよ、走ってきたから。」
罰が悪い表情をすれば私から手を引きそのまま自身の頬を掻く。
しかし、私からすれば、よく意味が分からない。
「走ってきた、ってどういうこと?」
「詩杏が倒れたって聞いて何も考えずに走ってて気付いたら保健室に居た。」
「え、それってどういう意…んっ?」
いきなり口が動かなくなったと思ったら、先生の顔が至近距離があって、唇に温かいものが触れていた。
「好きってこと。」
唇を離し真剣な眼差しの先生とは反対に私は口を開けはたから見ればきっと間抜け面をしているだろう。
「…え、本当?信じられません。いつから?というか本当なんですか?」
「良いから今は黙って寝とけ。風邪が治ったら教えてやるから。」
‘―…嫌ってくらいにな?’
そう耳元で囁かれて私は耐え切れず目を強く暝れば意地悪く笑う先生の声が聞こえてくる。
「ほら早く寝ろ。」
私の頭をぽんぽんと撫でる先生に目を開ければ先程とはうって変わって優しい笑みを浮かべていて私はもう一度目を閉じた。
「好きだ、詩杏」
額に先生からのキスが落ちると私は眠りに落ちた。
《目覚めたらもう一度》
この続きをしよう。
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恋華様1500hitのリクエストありがとうございます。
なんだかgdgdですみません(>_<)!
甘が希望とのことでしたが、ちゃんと甘になっているか不安です((、
お持ち帰りは恋華様限定で!