ミムラス!

□はらりはらり
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―…振られた。


好きで、好きでメイクも髪頑張って研究して、今日まで温めてきた片思い。

それが「ごめん、俺最近彼女出きたんだ…。」とあっさり終わってしまった。

そんな失恋から直ぐに立ち直れるはずもなく、現在私は放課後の屋上に一人で居る。

「うッ、…うッ」


ガチャと扉の開く音がして振り返ると、見覚えの無いスーツを着た男が立っていた。


「「……。」」


不覚にも目が合ってしまった…気まずい。

「放って置いてください、すぐ出て行くんで。」

そういったにも関わらずその人は私に近付いてきて、自分のジャケットを脱ぐと私の肩に被せた。


「こんな所にずっと居たら風邪引くぞ、着とけ。」

嗚咽が洩れそうになるのを止めるのに精一杯で何も言えず、その人は私の頭に一度手を置くと何も言わず屋上を出て行った。

「……。」

今日はこの冬一番の寒さだと結野アナが朝のニュースで言ってたけれどなぜかこの時私はとても暖かく思えた。





翌日の朝、
昨晩しっかり冷やしたおかげかなんとか目は腫れずに済んだ。
メイクをちょっとすれば凄い顔にならずに済んで、昨日掛けて貰ったジャケットを片手に学校へと向かった。


「…はぁ。」


正直、今日は学校に行きたくなかった。けれど失恋で休むのはちょっと気が引けるし、ジャケットを返さなくちゃいけない。後、お礼もきちんと言わなきゃ。…なんて、次々にやることが出来てしまい、渋々足を運んだ。



「詩杏―っ!」


教室に入るなり親友が私に抱き着いてきて慰めの言葉を掛けてくれる。ああ、やっぱり持つべきものは女友達だ。

「ありがとう。」
「…ねぇ、詩杏。さっきから気になってたんだけど、そのジャケット誰の?」


タイミングを見計らっていた様で、私がだいぶ落ち着いていると判断するなり私の手に有る男もののジャケットについて尋ねてきた。

「え―っと、その―。」


私自身もよくわからず、返答に困っているとタイミングよくSHRを告げるチャイムが鳴り、お互い自分の席に着いた。(助かった―!)
…そういえば、このジャケット誰のなのだろうか。昨日はそれどころじゃなくて“誰の”なんて考えられなかったけれど、返すには誰のかを知らなきゃいけないんだよね。声的には、きっと若い男性だったけど…。若い男性の先生と言えばこの学校では土方先生くらいだけど、土方先生の声じゃなかったもんな―。

な―んて脳内でぐるぐる思考を巡らせていると、担任である土方先生が教室に来た。


「お前ら席に着け。今日は出席の前に紹介する奴が居る」


予想外の展開にクラス中がざわざわする。「転校生ですか―」なんていう期待の込もった声が飛び交う他に、沖田君が「先生の彼女ですかィ?」なんて言い出した。

「……。」

土方先生は今日ばかりは沖田君にツッコムことなく苛々するのを必死に抑え廊下に向かって「入って来い。」と告げた。


それと同時に銀色の髪をしてYシャツを着た男が入って来た。なんでこんな真冬にYシャツだけなのか、と疑問に思いながらも私はその先生らしき男を見つめていた。


「呼ぶのおせ―んだよ。もう少しで銀さん凍死するところだったんだからね!?」


とくん、と心臓が跳ねた。…どうしてだろうか、初対面の筈なのに何故かこの先生の声聞いたことがある。


「ああっ!?てめぇがんな格好で居るからだろ。
とりあえずこいつは2学期の終わりに出産の為学校を辞めた清水先生の代わりに、3学期現代文とこのクラスの副担任をしてもらう坂田先生だ。」

「3学期から現代文の授業を受け持つ坂田銀時だ。宜しくな―…、ってあ―っ!」

自己紹介し始めた坂田先生は私と目が合うなりいきなりこちらを指差してきた。

ええっ?

「あ?てめぇ水口と知り合いなのか?」
「ちょっとな。」


うえええ。何何!?私知らないんですけど!?
坂田先生は私の机の前まで来ると机の上に乗っているジャケットを指差した。


「…そのジャケット俺のなんだわ。返して貰って良い?」


………昨日のあの人が、坂田先生?
確かに何処かで聞いたことのある声だとは思ったけれども。

「えっ…あっ!はい。」

慌ててジャケットを私せば「ありがとな」と笑顔を見せてくれた。


「名前は?」
「水口詩杏です。」
「詩杏ちゃんな。まぁなんかあったら、国語準備室に来いな。

あんな担任じゃ頼りになんないだろ―しな!」」

昨日と同じ頭にぽんっと手を置くとニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべ教卓の方に帰っていた。

「なんだとてめぇ―!」


しっかり土方先生にも聞こえていたようで凄い形相で睨んでいるもSHRの終わりを告げるチャイムがなり坂田先生は「じゃあこれから宜しくな!」とクラス中に響き渡る声で告げ逃げる様に教室を後にした。

それを追うように土方先生も教室を出た。

「…はぁ。」

なんか朝から色々と疲れたな。ため息を着き机に顔を預ける。

とりあえずジャケットは返せたけど、お礼言うの忘れたな。…昼休みにでも国語準備室行ってみますか。

…それにしても、先生の手が乗っていた頭が異常に熱い。それを考えると何故か顔まで熱くなってくる、なんだろ風邪かな?。







++++

新連載「ミムラス!」です。
次回、国語準備室で先生とお話します。


Title by シングルリアリスト

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