ミムラス!
□貴方への想い入荷しました
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「先生の好きな食べ物ってなんですか―?」
「銀ちゃんって何歳?」
「彼女居るですか?」
出張で不在の土方先生に変わり、SHRに来た坂田先生。SHRが終わった瞬間凄い勢いで女子に囲まれた。
赴任して1週間にして坂田先生は男子からは人気者、女子からはモテモテになったようだ。
私はそれを少し離れた自分の席で見守る。
出会い方が特別だった分勝手に親近感沸いちゃってたけれど今じゃ、人気者と生徒Aだもんね。
「坂田先生、朝から大人気者だね?」
そう話し掛けて来たのはクラスメイトの山崎君。席替えで隣になってから少しお喋りするようになった。
「…若い男の先生って珍しいもんね。それに女子高生って年上好きだし。」
「詩杏ちゃんも?」
「ん―別にそうでもないかな。」
まぁ、実際好きになったのは同じ学年の人だったしね。…あれ、私普通に過去の話っぽく出来る。私の精神も成長したようだ。
「そっか。……あのさ、今日さ放課後時間ある?」
「有るよ。どうしたの?」
「今日委員会有るから放課後残れって。昨日土方先生から言われててさ。」
「知らなかったや、ありがとう。」
山崎君との会話も終わり時計を見れば1限開始5分前。
1限は移動教室なので、教科書や筆記用具を手に取る。
教室出るにはあの群がりの傍を通らなきゃいけないのか。
別に群がるのは良いんだけど、ドアの前でやられると通りづらいんだよね。
なんて思いながら顔には出さないように傍を過ぎようと思ったら、
人込みの中から手が伸びてきて私の頭にぽんっ、と乗った。
「詩杏ちゃん、久しぶり、ってのは可笑しいか。喋んないだけで毎日顔は合わせてるもんな。」
見れば中から坂田先生が出てきた。周りの子からはちょっと驚きの視線と「名前呼びずる―い。」なんて声がちらほら。
「またなんかあったのか?」
考えている顔を暗い顔と捉えられ周りの女子生徒なんてお構い無しに先生の顔が少し近付いて来て覗き込まれた。
「いえ。なんでも無いです!」
慌てて離れればクスクスと笑い声が聞こえ、「やっば、詩杏ちゃん可愛い―わ。」なんて。
いたたまれずに教室を出た。真冬で寒い筈の廊下なのに顔がとてもとても熱い。
ごめんなさい、山崎君。
私もどうやら坂田先生、いわゆる年上というやつにときめいてしまったようです。
.title by シングルリアリスト様。