ミムラス!

□あの日、あの時、あの瞬間
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「じゃあザキも来た様だし、また明日な。詩杏ちゃん?」
「あっ、はい。」

先生はにっと歯を見せた笑顔で手をこちらへと振り土方先生と行ってしまった。


「―…随分と先生と仲良しなんだね?」
「まぁ、ね。それより委員会良いの」

時計を見れば放課後になってから随分と時間が経っている。早く委員会に行かなきゃと立ち上がった私の腕が捕まれた。

「…山崎、君?」

山崎君は随分と愁いを帯びた顔をしていた。

「委員会っていうの嘘なんだ。」

「えっ?」
「詩杏ちゃんに放課後残ってて欲しくて、だから委員会は嘘なんだ。」
「…どう、して。」


「俺、詩杏ちゃんが好き。付き合って欲しい。」


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気付いたら私は教室で突っ立っていた。


「山崎君が私のことを好き?、」


つい10分程前に知らされた事実。クラスメイトで席がお隣りさんの山崎君、隣になってから割とお喋りをするようになった、ちょっと地味だけど優しい山崎君が……私のことを好き。



夢ではないか、と思って頬を抓るも痛い、現実だ。ちょっと記憶を整理しようと思考を巡らす。



突然の告白されてほうけていた私は何も言えず、黙って彼を見ていた。
彼は顔を少し赤く染めながら息を吐くと真剣な眼差しをこちらに向け、


「ずっと前から詩杏ちゃんのこと好きだった。僕はアイツにのこと忘れさせる自信が有るよ。だから考えておいて?」

と告げて鞄を持ちそのまま教室を出ていった。


短い回想終了で現状に戻るのだが…。


ここで注意しておきたいのが、山崎君の言う『アイツ』。それは多分、1週間前に私を振ったアイツだろう。


けれどね、山崎君。
私多分アイツのことなんてもう気にしてないの。だってもう、私。


「…銀ちゃんに会いたい。」


多分銀ちゃんに恋してる。
最近アイツのことを考えるよりも銀ちゃんのこと考えている時間の方が多いんだ。




鞄を持って教室を出る。最初はゆっくりだった足取りも徐々にスピードを増し、いつの間にか走っていた。


着いた先は国語準備室。きっと此処に居る。とりあえず走ったせいで荒くなった息を整える。そしてドアに手を掛けた時、

「ふざけるな!」


中から土方先生の声が聞こえた。それはとても大きく、怒りを含んでいたものだった。


「そ……こん……。
「…じ……に……せ。」」
「…か……わ…た………るな…。」


扉一枚なのに普通の声での会話は途切れ途切れにしか聞こえない。興味津々だけれど立ち聞きなんてよくない、特に先生同士なんて。


何があったか分からないけれど事態はとても深刻そうだ。


銀ちゃんに会って、話したかったけれど今日はこのまま帰るしかなく、帰路についた。




title by シングルリアリスト


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