ミムラス!

□そしてあの花が咲くたびに
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「おいっ!、待てよ。」


屋上に着いたと共に後ろから声が聞こえ腕が引っ張られて、体勢が崩れた私が誰かの胸板に頭を預けるのが一瞬の出来事だった。

「…捕まえた。」
「……銀、ちゃん?」

上を見れば銀髪の見慣れた姿。先程と違い服を着ているもそれは初めて教室に来た時と同じYシャツ姿だった。


「やっぱ寒いな、この姿。」

くしゅんとくしゃみをしては肩を震わせる。見てるこちらも寒くなるっての。

「……だって、冬ですもん。」
「でもさ、あの時も今もYシャツ姿になっちまったけど後悔はしてねぇんだよな。」


そう言うと私を抱きしめていた腕を緩めくるりと方向転換させられ、銀ちゃんと向かい合う形にさせられた。

「……俺、やっぱ詩杏ちゃんが好きだわ。」


「は?」

「は?」


上が私ので、下が銀ちゃんのもの。いやいやいや!いきなり何言い出すんでしょうかこの人は。

「え、だって、銀ちゃんさっきA組の子と!昨日だってうちのクラスの子とヤったって言うじゃないですか。」


なんか自分で言って悲しくなったけれども、それが現実なのだ。

「ヤってみたんだけど、やっぱり詩杏ちゃんが忘れられねぇんだよ!!」

「い、意味が分かりません!」

だって、いきなり他の子といちゃいちゃしてたかと思えば(私は直に見させられたのだ)いきなり好きだなんて…。


「昨日、放課後土方に呼ばれてさ」


昨日、土方先生と銀ちゃんが国語準備室で話し合ってて土方先生が怒鳴ったのを覚えている。先生の今日の行為と昨日のそれが何か関係しているの?


「詩杏ちゃんが好きなのか、って聞かれて好きだって答えたら案の定怒鳴られた。」


いきなりの爆弾発言。
私は状況が理解できず「それで?」と尋ねた。


「俺の為じゃなくて詩杏ちゃんの為に諦めろ、って。でも諦め様と頑張ってみたけど無理だったみたいだわ。」



「それで女遊びしたの?」って聞いたら先生は首を縦に振った。


「けど、他の女抱いてても詩杏ちゃんのこと考えちまうし、さっき詩杏ちゃんが泣いてるの見てすっげー後悔した。」

「御前のため、詩杏ちゃんの笑顔が見たくてやってることでなんで泣かしてるんだ、って。」

そう伝える先生の目は真剣で、これは本気なんだなってとても伝わってくるものだった。

「やっぱり教師と生徒の立場があるから付き合って欲しい、とは言えねぇけどさ、俺は詩杏ちゃんが好きだ。」

その言葉に心臓が倍速ぐらいに動いてるんじゃないかってくらい鼓動が激しくなる。

「多分始めてこの屋上で会った時から。あの泣き顔を俺が笑顔にしたい、って思った。」


真っすぐに私を見る銀ちゃんに凄くドキドキするけれど、私もちゃんと自分の気持ちを伝えなくちゃいけない。


「…私も。私も銀ちゃんが大好き」


「先生が女遊びしてるって聞いて本当にショックだった、けどどうしても先生のこと諦められなかった。山崎君に告白されて、私相手を振ることがどれだけ傷付けるかって知っていたけれど、先生のことがやっぱり好きで、大好きだって思った。」




そう言い切ると先生はため息を吐き「あ―、やっべ。俺詩杏大好き」と思い切り私を抱きしめた。突然のことに驚きながらも「私も、ですよ」とだけなんとか答える。


「けど、後1年ちょっと我慢しようか。やっぱり悔しいけど土方の言うことは正しい。俺のせいで詩杏ちゃんが不利を被ることがあれば堪えられねぇし」
「……私も銀ちゃんに何かあったら嫌だ。」
「それまで、俺の気持ちは絶対変わらないしな!」


こんなに好きなんだから私の気持ちも絶対に変わるわけが無いよ。


「先生。もう女遊びしちゃだめですよ?」
「詩杏ちゃんが構ってくれるならな。そっちも、他の男簡単に近づけんじゃねぇぞ。山崎に告られたなんて銀さん初耳なんだから。」


そう言われて山崎君の事を思い出した。私どうやら上手く行ったみたいです、ありがとう山崎君。後でちゃんとお礼を言おう。


「精進します。」
「宜しい。」


照れた顔を隠すように俯いたものの詩杏、なんていきなり呼び捨てされて顔をあげれば唇に暖かいものが当たって、銀ちゃんの顔が近くにありキスされたのだと分かるのに少し時間が掛からなかった。


「……嫌、だったか?」


私が何も言わないことを不安に思ったのか心配そうに顔を覗かせる銀ちゃんが可愛く見えて自然と笑みが零れた。
「とっても嬉しいよ!」


銀ちゃんの手が私の頭に乗ってリズムよくぽんぽんと叩かれる、何度されてもこれはドキドキしてしまう。


「―…やっぱりその笑顔良いな。」


そう言ってくれるなら、
私は君の隣でなんどでも笑うよ。




END.

Title by シングルリアリスト様.


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