キスシリーズ

□言葉を封じるキス
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「…っ、十四郎、私っ…。」

電話越しに聞こえたのはお前の泣いている声で、場所を聞いて「今すぐ行く!待っとけ」と電話を切って走り出した。


近くの公園の滑り台の下で三角座りしているのは紛れもなく俺の幼なじみで、先程の電話相手である詩杏だ。

俺の足音に気づき上げた顔は目を腫らしていて酷いものだった。

「…十四郎、私振られちゃった。というか先生にとって私は遊びの中の一人だったみたい。」

俺は詩杏の横にしゃがみそっと頭を撫でた。

「無理して笑うなよ、」


自嘲じみた笑みを浮かべる彼女の顔はとても見ていられるものではなかったのだ

「だって笑えちゃうよ。十四郎はちゃんと先生のこと辞めとけって言ったのに、」


なんとなくこうなるのはわかっていたんだ。銀八にはあまり良い噂が流れていないのを俺は知っていたから。特に恋愛関係ではたくさんの女子生徒に手を出していると。だから詩杏が銀八と付き合うと聞いた時俺は止めた。

「もういい。」

「それなのに自惚れちゃって」

だが、詩杏は「私は特別だから」と言い張って噂を信じようとしなかった。否信じたく無いほど惚れていたのかもしれない。

「もういい。」

「呆れちゃうよね。本当、私ばかみたい」

俺は知っていて止められなかった。俺がもっと強く止めていたら詩杏がこんなに悲しい思いを済んだのかもしれない。
そう思うと心底自分に腹が立ってきて、

「もういい!!」


俺はお前のそんな言葉を塞ぐ様にキスをした。


「…とう、四、郎?」

「とにかく今は黙って俺の胸で泣いとけ。」

そう言って強く詩杏を抱きしめた。
周りの奴は俺のことをエゴだと言うだろう。俺自身もそう思う。けど、俺にはこうするしか出来なかった。

言葉を封じるキス


+++
解説?

何と言うか、傷付く所を見たくなくて強く引き止めたい気持ちもあったけど、詩杏ちゃんが先生のことどれだけ好きなのかも知っていて…。土方君は葛藤したと思います。今後彼は迷うことなくアプローチし始めると思います、はい。結局詩杏ちゃんが好きだから。自分なら泣かせないなんて思ってるから。


「恋したくなるお題」様より


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