短編
□聖なる夜から始まる。
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クリスマス当日、街はピカピカ光るイルミネーションやサンタのコスプレをした店員さんによるケーキを売る声でクリスマスムード一色だ。
去年の私は屯所にお邪魔して恋人である総悟君と共にクリスマスパーティを楽しんでいた。
けれど、
私は今自室に居る。
なぜなら私は明日試験を控えた受験生なのだ。
そんな私にクリスマスなんてあるはずなく、ひたすら机で参考書達と睨めっこ。
早く受験生なんて終わりたい。
はぁ、と溜息を着いていると携帯が鳴った。ディスプレイには「沖田総悟」の名があった。
先日クリスマスパーティー(お誘いはあったが流石に私も前日にパーティーへ行く勇気はない)が有るから25日は会えないと聞いてて電話が来るとは思っていなかったので、驚いて電話を取る。
「もしもーし」
総悟君いつもどおりのやる気の無い声が聞こえる。電話の向こうからは近藤さんの叫ぶような声が聞こえる。なんて楽しそうなんだ!
「…もしもし?」
「どうでィ捗ってますかィ?」
「全然。私も屯所のパーティー行きたかったな―。」
「俺は来て欲しくねェでさァ。酒飲んで暴れてる野郎共に詩杏を合わせたく無いんでねェ。」
うあうあうあ!キュンってきちゃったよ。どうしよう。私、
「…総悟君に会いたいです。」
「可愛いこと言うじゃねェですかィ」
クツクツと笑い声が聞こえて来るが、それだけですか?普通そこさ俺も。とかじゃないんですか?
「…総悟君は会いたく無いの?」
思わず尋ねてみるも返事を聞く間も無く何故かピンポ―ン、とチャイムが鳴った。
「あ、誰か来たみたい。」
「行って来なァ」
家族は自分達が居たら気が散るという名目で出掛けてしまったので、私が出るしか無く携帯を一旦机に置き部屋を出て階段を降りる。
「はいは―い。」
玄関を開ければ宅配便のお兄さんが居て、私宛ての荷物を持っていた。サインを書いて受け取る。小さい紙袋だけど誰からだろう?と差出人を見れば…。
『沖田総悟』
…総悟君!?
急いで階段を駆け上がり携帯を手に取る。
「もしもし総悟君!?うえええっと、そのおおお。」
いきなりのクリスマスプレゼントに動揺しまくる。だって!だって!だって!。
「煩ェ。一回落ち着きなァ」
とりあえず言われた通り深呼吸する。
「私宛てに沖田総悟様から宅配便が来たのですがこれは何ですか。」
「開けて見れば良いんじゃねェですかィ?」
ごもっともなお答え。私が袋へと手を伸ばすと「んまぁ、安全なものかは保障は出来やせんけどねェ」と総悟君は続ける。
「うえええ!それは爆弾とか入ってる感じですか?」
「さぁな。」
「もう知らない!」
えいっ!と袋を開けて中を見ればリボンの掛かった小さい箱が入っていた。このサイズって…。
「…えっ?これって…。」
リボンを解き箱を開ければ綺麗な光を身に付けた指輪だった。
「指輪…、なんですが。」
とりあえず爆弾じゃなくて良かった。
「思い出しやした。俺はこれを言うために電話を掛けたんでィ」
「えっと…?何でしょうか?」
「もし、万が一落ちた時は、俺の嫁にしてやらァ。だから安心して頑張って来い。」
《聖なる夜から始まる》
「プ、プロポーズ!直接言われたかったな。」
「会っちまったら勉強所じゃ無くなりやす…俺が。」