短編

□一番最初に君と、
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除夜の鐘が鳴り出す。
今年ももう終わるんだな―、なんて呑気に思いながら年越し蕎麦(インスタント)片手に友達に送る年賀状メールを作成する。

私は今年秀徳に入りたくさん友達が出来た。そして、好きな人も出来た、高尾和成。クラスメイトでバスケ部。勿論片思いだけど。

…送ろうかものすごく迷う。
けど、時間ももう全然無いわけでなんて思っていると、時計の針は頂上を指し、新年を迎えちゃった。

あ―あ、どうしよ。
向こうは人気者で私なんて単なる一クラスメイトだしな。挨拶はするし、たまにお喋りだってする。けど、親しいか、と言われればそれは分からない。

…なんて思っていると携帯がぶるぶると震え出した。ディスプレイを見て思わず肩が震えた。

“着信 高尾”

………え、あ、なんで高尾?
深呼吸をして通話ボタンを押す。

「あけましておめでと―!」

テンションハイな高尾。

「あけましておめでとう。…って何故高尾?」

「酷っ。ってか今何処に居んの?」

「…今?家だけど。」

「偶然。…俺も今水口の家の前に居るんだけど。」

……今なんて言った?
高尾が私の家の前?
あの高尾和成が私の家の前に?…えっとなんで私なんで2回言ったんだろ、

とにかく、慌ててコートを羽織って玄関へと向かう。ドアを開ければ本当に、高尾が居た。

「あけおめ―。」
「…。」

高尾はへらりとした笑みを向ける。
私は驚きすぎて言葉が出て来ない。

「…えっと詩杏ちゃん?」

「…あっと、あけおめ。どうして居るの?」

やけに気まずそうな顔をした。あ、あれか。なんかの罰ゲームか、それなら納得。なんて心の中で考えていたけど、高尾の口から出て来たのは予想外の言葉。

「あのさ、あけおめメール送ろうか迷ったんだけどさ、」

デジャヴュ。
先程の私と全く一緒な心境だ。
…でも高尾がなんで?

「でもメールより電話のが良くて、んで、電話ってなったら…」

少し間が空いて、

「会いたくなって、さ。」


口元を手で隠し顔を赤くしてぶっきらぼうに吐き捨てた。
思わず可愛い、とか思ったけどそうじゃなくて
「………あの「…だから!」。」

「詩杏のことが好きだから会いたくなったんだってば!」
高尾があまりにも大声だったから、その声がご近所さんまで知れ渡ったとか渡らなかったとか。

【一番最初に君と、】


「私も好きだよ、高尾のこと。」
「まじでっ!?」
「うん!本当。」
「詩杏ちゃん可愛い。大好き!」
「ちょっ!家族に聞こえるから」


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