短編

□綿飴に笑う
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今日も屯所の縁側でぽかぽか。
あぁ、皆さん。今日も江戸は平和な様です。
これだけ平和なら見回りなんて行かなくて良いと思います、うん。


「詩杏どうでィ?」

後ろからの声がして振り向けば恋人の総悟君が居ました。確か今日は彼の年代の成人式の日で、そういや屯所は朝からちょっと騒がしい。

彼は黒のスーツを着ていて髪もきちんと整えられていた。いつもの隊服も似合うけど、スーツもぴしっとしててかっこいい。元がイケメンなのもあるけどね

「かっこいいよ、とっても。」

彼は「本当ですかィ」と嬉しそうに笑みを浮かべ私の隣に腰を降ろした。

私の方が年下なのに不覚にも、可愛いな―。なんて思ってしまった。言ったらどんな仕返しが帰ってくるか分からないから言わないけれど。

「ねぇ、総悟君?行かなくて良いの?」

先程から近藤さんの「総悟―。」と言う声や隊士達の「沖田隊長」と言う声が屯所中から聞こえてきている。

「あぁ、もうこんな時間ですかィ」
「なんか、人事みたいだねェ。」
「はは、違いねぇでさァ」

何かぎこちない雰囲気を総悟君は出している。何か大事な話でも有るのかな?悲しい話だったら嫌だな。

「あのさ、」

来た!!
うん、と答えて私も身構える。

「今晩子作りしやせんかィ?」

………え?


「いつも土方の野郎に言われてるだろ。ガキが餓鬼つくるんじゃねェって。俺も今日から立派な大人…とは言いきれやせんけど、頑張っていくんで、

俺のガキ産んでくれやせんかィ?」


「……喜んで。」


嫌どころかとてもとても嬉しい話だった。総悟君は照れ臭そうに視線を反らしていてやっぱり可愛いな、って思ってしまった。


その後直ぐに隊士の一人に見つかってしまい、「総悟早くしねぇと間に合わないぞ!」と慌ててやって来て土方さんに無理矢理引っ張られて言ってしまった。

「詩杏―。今晩は寝かせやせんからねィ」

総悟君の引きずられている様子はなんだかとても滑稽で彼ももまだまだ子供だ、なんて思った。

さてと、今晩は寝かせてくれないようだし、私は縁側で再びひなたぼっこでもしましょうか。

【綿飴に笑う】


2013年、成人の皆様おめでとうございます!
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