短編
□愛に応えるのも簡単じゃない
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本日2月14日はバレンタインデー。世の中の女の子達は大好きな男性へとチョコを渡すのが日本の風習である。私の通う海常高校にはそんな女の子達からふんだんに愛を貰っているやつが居る。
「「「黄瀬くんっ!」」」
予想はしていたけれども、
「「黄瀬君!!」」
予想はしていたけれども、
「「「黄瀬く―んっ!」」」
『黄瀬涼太』とはこれほどまでか―!!
朝練終わり体育館を出たと同時に女の子が黄瀬を取り囲み我先にと次々チョコを渡していく。黄瀬も黄瀬でモデルということもあり嫌な顔することなく受け取っている。
「詩杏っち先輩、先に着替え行ってください」
チラチラとこちらを向いては、置いておきぼりになった私を気にしていたようで、女の子達にごめん、と一言告げて私に上記の様に告げた。
「ん、了解。」
朝からお疲れ様です。と私は内心後輩の黄瀬に敬礼して更衣室へと向かう。私はマネージャーであまり動いてないから、選手みたく汗だくになることもなくそんなに急いで着替える必要は無いんだけどね。
だけど、あの場に居るのもとても気まずいもの。
更衣室に戻り私は自分の持って来た、紙袋へと視線を向ける
そこにはバスケ部の部員達へのチョコが入ってあり、形も数も皆一緒。
黄瀬とは他の部員より仲良くしているためちょっと違ったものにしようと思ったが渡す機会が無いと踏んで持ってこなかった。
まぁ、あれだけ本命のチョコ貰ってたら一つ位義理チョコでも良いよね?
コンコン、とドアをノックする声が聞こえて、「誰―?」と問うてみるも返事は無く、慌ててネクタイを整えて扉を開ける。
「―…花?、」
目の前には小さなブーケ。
そのまま顔を見上げれば見慣れた金髪の顔、黄瀬だった。
「詩杏っち先輩、ハッピーバレンタインッス!」
「えっと…?、」
「他の国じゃ男が女の子に贈るっていうじゃないですか?だから逆バレンタイン。」
モデルスマイル炸裂。←
いつものわんこじゃなくてこんなかっこいい表情されては、幾ら後輩相手でもときめいてしまうもので素直にブーケを受け取る
「…流石モテる男は違うね?でもこんなの皆にやってたら大変じゃない?」
小さくてもブーケの値段って案外ばかにならないもの。あ、モデル業で儲けてるか。
「ば―か。こんなことするの詩杏っち先輩だけ、っスよ?」
私、だけ?マネージャーだから?えっと、、。思考を幾ら巡らせても何も出て来ない。それどころか、疑問ばかりが増える。
「詩杏だけ、特別。」
追い打ちを掛けるようそう耳元で囁かれちゃあ余計意味わかんなくなるし、顔赤くなるしで自分でも分かるくらい動揺してて、チョコの入った紙袋を取りに行くと共に一旦黄瀬から離れる。
「あの、私バスケ部には皆同じチョコしか…。」
私と同じ様に更衣室の中まで入って来た黄瀬は溜息を着いて、(というかここ女子更衣室なんだけど)
「やっぱりっスか、俺を振るなんてやっぱり詩杏っち先輩は特別っスよ?
詩杏っち先輩といつも仲良くしてるのも、詩杏っち先輩が好きだから。今日のお返しはホワイトデーに待ってるっス。」
なんて言って更衣室を後にしようとする黄瀬の腕を引っ張りこちらを向かせその勢いのままキスをする。
「…お返し、これじゃだめ?」
自分の行動力に自分でもびっくり。けれどホワイトデーまで待てないんだもの。
黄瀬はというと、いつもの様な尻尾をぶんぶん振っている様なわんこの状態で今日1番の笑顔と共にぎゅうっと抱きしめられた。
嬉しいのは勿論だけど、とりあえず朝のSHR間に合いそうに無いです。
title by ポケットに拳銃様
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