奇跡の生還者達

4.『変化』
1ページ/6ページ


4.『変化』


ある朝のソリア学園。

少女が自分の教室へ向かおうと階段を昇っていると、突然上から慌てて駆け降りてきた男子生徒とぶつかった。

少女はバランスを崩し階段を踏み外した。

周りの生徒は、突然の出来事にその光景を呆然と見つめることしか出来なかった。

少女は次に来る痛みに恐怖し、咄嗟に目を瞑(つぶ)った。





が、受けるべき痛みはいつまでたっても来なかった。

そっと目を開けると、誰かが自分の体を後ろから支えていた。

少女はゆっくりと後ろを振り返る。

その目に映ったのは予想外の人物だった。

「平気か?」

それはカオルだった。

その光景に周りの生徒も絶句した。

学園内でも一匹狼で有名だったカオルが少女を助けたばかりか、労りの声をかけたのだ。

「は……はい……」

女子生徒は硬直したまま動かない。

カオルは不審そうな表情で少女を見つめた。

カオルに見つめられ、少女は次第に顔が熱くなるのを覚えた。

カオルは元々容姿が良いため、入学当初、女子の中で注目の的となっていた。

しかし、声を掛けても無視され続け、カオルに近づこうとする女子はいなくなった。

だが、修学旅行での漂流事件から生還したカオルは変わっていた。

当時の全てを拒絶するオーラは無くなり、表情も穏やかになっていた。

その噂はすぐさま学園内に広がった。

それでもまだ女子達の間では一歩踏み込めない状態にあった。





「おい?」

カオルに再び声を掛けられ女子生徒ははっとした。

「あ……!だ、大丈夫!!あ、ありがとう!!」

少女は顔を真っ赤にして、慌てて階段を駆け上がっていった。

意味が分からずカオルは首を傾げるが、すぐに興味を無くしたように階段をゆっくりと上がっていった。





「さっきのカオル見た?」

「見た見た!」

「うん!凄くカッコよかったね!」

カオルが去った後、その光景を見合わせた女子達は、その瞬間心ときめいてしまった。

「カオルって変わったよね?」

「そうそう、昔は声かけても完全無視だったのに」

「性格丸くなったよね!加えて頭も運動神経も良くて、カッコイイだなんて、もう完璧すぎ!!」

「私アプローチしちゃおっかな〜?」

その後、カオルが女子生徒を助けた、という噂は瞬く間に学園の女子の間で広まっていった。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ