奇跡の生還者達
□5.『人気者2人』
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5.『人気者2人』
「あ、カオル!ちょっといいか?」
廊下を歩くカオルを男子生徒が呼び止める。
カオルは足を止めて声を掛けた少年へ顔を向けた。
「実は美術の授業で、地球で使われていた工芸品を1つ決めて作ってこいって課題が出ちゃったんだよ」
「それで?」
「とりあえず竹細工を作る事に決めたんだけど、テキストに載っている説明が難しくて参考にならないんだよね〜」
少年は頭をポリポリ掻きながら苦笑いした。
「あれは随分と端折(はしょ)られているからな」
「で、カオルって漂流した時に率先して色んな道具を作ってたって聞いたもんだからさ、カオルに作り方を教えてほしいんだ!」
少年は手を合わせて懇願した。
「……分かった」
「ほ、ホントか!?」
「ただし、やり方は教えるが作るのは自分でやれ」
「ああ、それで構わないよ!ありがとう!ちゃんと礼はするからさ」
そんな光景をベルとシャアラが見かけた。
「カオル、最近男の子にも人気が出てきた気がしない?」
シャアラの問いにベルは頷いた。
「カオルは口数少ないから誤解されやすいけど、やる気のある人に対してはとても協力的だからね」
2人がカオルの後ろ姿を微笑ましく眺めていると、反対側から大きな箱を抱えたルナが女子生徒と共に歩いてきた。
「ゴメンねルナ……わざわざ手伝ってもらっちゃって……」
「あはっ、大丈夫よ。こう見えても私、結構力持ちなのよ?」
申し訳なさそうにする少女に、ルナは明るい笑顔を向ける。
その裏表の無い笑顔を見て、少女も自然と笑顔になった。
「ルナも女の子に人気があるよね」
ベルは優しい眼差しでルナを見つめた。
「ルナは明るくて、人見知りしないから、誰とでもすぐ仲良くなれるもの」
シャアラとベルは目を合わせると、何だか可笑しくなりお互いに肩を震わせた。
「2人して同性を褒め合うなんて、何だか変な感じね」
ベルも肩を震わせたまま同意した。
ルナとカオルが男女ともにここまで人気が出たそもそものきっかけは、1週間前に遡る事となる。