奇跡の生還者達

9.『2月14日(後編)』
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9.『2月14日(後編)』


現在カオルは屋上にいた。

カオルはあれから何十人もの女子からチョコを渡され、さらにその中の数名からは告白までされていた。

避難的な意味で、カオルは屋上の給水塔の上に座っていた。

(この大量のチョコを……どうしろと……?)

カオルは脇に積み重ねてある大量のチョコを一瞥すると、深い溜息を落とした。

そして暫(しば)し考えたのち、携帯を取り出して、とある人物にメールを打ち始めた。





その後、授業が始まってもカオルが教室にやって来る事は無かった。

「カオル、何かあったのかしら……」

授業中、シャアラが隣にいるルナに小声で話しかける。

「う、うん……どうしたんだろうね……」

ルナはそう一言返すと、視線を机上の電子テキストに向けた。

向けただけで、テキストの内容は全く目に入っていない。

それどころか、教師の話の内容も全く耳に入っていかない。

脳裏に嫌というほど繰り返し浮び上がるのは、朝に見た光景。

それを思い出す度にルナの顔に影が差す。

ルナは完全にうわの空だった。





授業の最中、ベルの携帯が突如震え出した。

携帯の画面を見ると1件のメールが届いていた。

(カオルから……?)

ベルは思わず教室内を見回した。

そこにカオルの姿は無い。

ベルは視線を携帯へと戻し、メールを開く。

授業中という事を配慮してか、音声の出ないよう動画の無い、文章だけのメールであった。

『授業が終わったら、紙袋を何枚か持って屋上に来てくれないか?』

詳しい説明は無く、それだけ書かれていた。

(紙袋……?)

それが何を意味するのかよく分からないが、きっと理由があるのだろう、とベルは納得した。

画面を返信モードに切り替え、『分かった』と一言打つと、ベルは送信ボタンを押した。


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