奇跡の生還者達
□11.『試合(前編)』
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11.『試合(前編)』
今日の授業が終わり、ホームルームが始まった。
担任のスペンサーが業務連絡を淡々と伝え、最後に何か質問等はあるか、と尋ねると1人の生徒が挙手した。
「どうしたメノリ?」
スペンサーが尋ねると、メノリは手を下ろして起立した。
「そろそろエアバスケ大会に向けて話し合いたいと思うんですが……」
「ああ、そういえばもうそんな時期だな。分かった、後は任せる」
そう言ってスペンサーは教卓をメノリに譲った。
それを確認すると、メノリは頷き、教卓の前に立った。
「ねぇ、エアバスケ大会って何?」
ルナがシャアラに尋ねる。
「そっか、ルナは知らないんだっけ。ソリア学園ではこの時期になるとクラス対抗のエアバスケ大会が開催されるの。一種の球技大会みたいなものよ」
シャアラの分かりやすい説明に、ルナはなるほど、と納得した。
「今年もくじ引きでチーム分けをしようと思うのだが、いいだろうか?」
特に異論は無く、皆が頷くのを確認するとメノリはくじの入った箱を教卓の前に出した。
「では順番に引いていってくれ」
その言葉に従い、生徒が順番に箱に手を入れくじを引いていく。
当然生徒が皆やる気がある訳ではなく、中には「だりぃ〜」といいながらくじを引く者もいる。
そんな様子にムッとした表情をするメノリを、ハワードはじっと眺めていた。
全員がくじを引き終えた事を確認し、メノリが番号確認の指示をだそうとした。
そこへ突然割り込んできたのはハワードであった。
「な、何だハワード!?」
前に出てきたハワードにメノリはギョッとする。
「ちょっと僕に提案があるんだ」
「提案?」
メノリが怪訝な表情で尋ねる。
「まぁ、とりあえず言ってみろ」
その言葉を聞き、ハワードはニヤリと笑った。
その笑顔にメノリは嫌な予感がしてならなかった。
そんなメノリの心配を余所に、ハワードは教室に設置されている全校放送用マイクを手に取ると、学園全体に公言した。
「ソリア学園の生徒諸君、よーく聞け!」
そう切り出したハワードの言葉にクラス中、いや、学園中が注目した。
「今年のエアバスケ大会は本気で試合に臨んだ方が良いぞ?何せ、今年の大会の優勝チームには景品が贈られるからな!」
そのハワードの公言に学園中が騒然となった。
「景品はそうだな……1人1つずつ、希望の商品をゲット!って事でどうだ?勿論、経費はハワード財閥が受け持つから、高価な物でもオッケーだぞ!」
ハワードの提案を聞き、学園中に歓声があがった。
望みの商品が得られる、それだけでやる気の無い生徒にも一気にやる気が沸いているのが目で見て分かる。
「ハワード……お前って奴は……」
メノリは額に手を当て、頭が痛いといった身振りで呆れていた。
「何だよ?これでみんなのやる気が上がるんなら安いもんだろ?」
メノリの反応を見て、ハワードが不満そうに言う。
「……まぁ、そうだな」
メノリは苦笑いしつつ、ハワードの突拍子な行動に今回は感謝した。