奇跡の生還者達
□5.『ある雨の日(前編)』
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5.『ある雨の日(前編)』
ロカA2には『気象法』という法律が存在する。
これは、コロニーの気象を管理する者が独断で天候を操作濫用しないよう定められたものである。
毎月1ヶ月に1度、『気象確定議会』なるものが連邦議員らの間で開かれる。
そこで、来月の天候をどのようにするかを議論するのである。
主に決めるのは次の通り。
『雨』の日をいつにするか?
その降雨量・時間はどれくらいにするか?
その月の気温設定はどうするか?
風速・風向はどうするか?
などである。
わざわざ時間まで割いて、何の為にこんな事を議論するのか、疑問に感じるかもしれないが、意外にもコロニーではとても重要な事となっている。
まず基本的に、コロニーには四季が存在し、その四季に合わせて気温の設定が行われる。
夏なら気温は高く、冬なら低く。
そうする事で、夏の暑い日には涼しい食品が多く売れ、プールなどの娯楽施設が繁盛し、逆に冬の寒い日には温かい食品やコートやセーターなどの防寒具が多く売れるのである。
つまり、流通の循環を良くする効果があげられるのだ。
その為に、風を吹かせる事で気温の調整を、雨を降らせる事で湿度の調整を行っているのである。
住民には、日程が決定次第テレビ等で随時報告する事となっている。
それを確認し、コロニーの住民達は各々傘を持参したり、交通機関を利用したりするのである。
5月も半ばを過ぎ、夏に向けて気温も少しずつ上昇させている。
テレビを付けると、気象報道士が本日の天候をお茶の間に伝えている。
本日の気温は18℃、昨日よりやや低めの設定となっております。
湿度は75%、ややジメジメするかも知れません。
今日は『雨』の日です。
降雨予定時刻は午後3時から午後8時までとなっております。
この時間帯に外出される方は傘をお忘れなく。
洗濯を干している方も、取り込み忘れにご注意ください。
以上、気象報道でした。