記念作品

□10000hitキリリク小説
1ページ/4ページ



私の隣に立っているのは愛しい人。

私の前に立っているのは神父さん。

神父さんが隣の彼に誓いの言葉を投げ掛ける。

彼は静かに、しかし強い想いの込もった返事を返す。

神父さんは、今度は私に視線を向けた。

「汝は、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、命ある限り真心を尽くす事を誓いますか?」

「誓います」

私は緊張気味に、しかし力強く答えた。





指輪の交換を終えると、彼は私の顔に掛かったベールを優しく捲り上げた。

私は頬を少し紅く染め、はにかんだ。

少し恥ずかしい気持ちもあるが、それ以上に幸せな気持ちで満たされていた。

そんな私の気持ちを汲み取ったのか、彼はふわりと優しく微笑んだ。

彼の顔がゆっくりと近づくのを確認し、私はそっと瞼(まぶた)を閉じた。



愛しい彼と交わした誓いの口付け。

それは共に人生を歩んで行く事を誓う証……





10000hitキリリク小説

『Sleeping Beauty』






おいしそうな香りに誘われる様に、私の意識は浮上した。

そこは先程までいたはずの教会ではなく、寝室のベッドの上。

「夢……?」

先程までの出来事が夢であった事を知り、私は肩をガクッと落とした。

幸せな夢であるほど、現実に引き戻された時のショックは大きい。

私は深いため息をついて、朝食の香りのする方へ向かって行った。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ