記念作品
□10000hitキリリク小説
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ダイニングキッチンに入ると、更なる衝撃が私を襲った。
テーブルの上に並べられた朝食。
それは別にいい。
問題なのは……
「カ……カオル……?」
そう、食卓のイスに座って電子新聞を眺めている彼の姿があった。
「……どうした?そんな所に突っ立って」
「な、何でカオルがここに!?」
状況が掴めず、私は混乱した。
そんな私にカオルは呆れた表情を向けた。
「……じゃあ逆に質問。ルナの左の薬指に付けているものは何だ?」
カオルに指摘を受け、私は視線を自分の左手に向けた。
そこには、私にとって幸せの象徴とも言えるリングが光輝いていた。
それを見て私の脳はようやく目を覚ましたようだ。
「そうだ……私達、結婚したんだ……」
私とカオルは昨日結婚式を挙げた。
といっても壮大なものではなく、家族と仲間達だけを呼んだ小さなものだ。
ハワードが式や披露宴のプロデュースを買って出たが、それは丁重にお断わりした。
私が望んだのはただ1つ、お父さんが眠る火星で式を挙げる事。
他の誰でもない、お父さんに私の花嫁姿を見て欲しかったから。
私の言葉を聞き、カオルは更に呆れた様に肩を落とした。
「昨日の今日で普通忘れるか?」
「うっ……だ、だって!結婚式の時の夢を見たものだから、昨日あった事が全部夢かと思っちゃって……」
みるみる私の声が小さくなる。
カオル怒ってるだろうな……
夫婦になったのに、「何でいるの?」だもんなぁ。
嫌われちゃったかな……
離婚なんて言われたらどうしよう……
私の中の考えが、どんどん悪い方向へと向かっていく。