記念作品
□40000hitキリリク小説
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その日の朝、目を覚ましたカオルは、全身に気だるさを感じながらベッドから起き上がった。
体が熱いと同時に悪寒も感じ、もしやと思いながら体温計を脇(わき)に挟み、じっと待つこと数分。
アラームが鳴り、モニターに虚ろな目を向けると、そこには38.5℃の数値が。
本日は通常通り学校もあり、放課後にはバイトもある。
しかし、無理をすれば余計に風邪をこじらせる事になりかねない。
何より、他人に風邪をうつす訳にもいかないだろう。
ボーッとする頭で考えること数秒、カオルが結論を口から漏らす。
「……休むか」
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『特効薬』
ホームルームにて、担任のスペンサーからカオル欠席の報告を受け、クラスは一時(いっとき)騒然となった。
特に女子生徒から漂う悲壮感は凄まじく、カオル不在の学校を憂うか、お見舞いに行こうと画策するか、いずれかの反応に二分されるようだ。
「やかましい!!いちいち騒ぎ立てるな!!」
メノリから叱声が飛び、教室内を威圧する。
これが他の男子生徒ならば、ほとんど反応を示さないだろうに、この格差は一体何なのだろうか、とメノリは深い溜息をついた。
「でも意外だよ。カオルも風邪引くんだね」
「確かにそんなイメージ、あまり無いものね」
ふと洩らしたシンゴの言葉に、シャアラも同意を示す。
カオルの様な超人的能力を持った人間は風邪など引かない、と勝手な偏見を抱いてしまっていたようだ。
「まったくよー、カオルも軟弱だな」
ハワードが少し小馬鹿にしたようにほくそ笑む。
「僕みたいに健康な人間なら、風邪なんて引かないのさ!」
自慢気に語るハワードを尻目に、今度はシンゴが薄ら笑いを浮かべた。
「あぁ……何とかは風邪引かないってよく言うしね」
「何だとー!?」
シンゴの発言に過敏に反応したハワードがムッとした表情で詰め寄る。
「はいはい、そこまで!」
手をぱん、と一度叩き、いがみ合う2人の間にルナが割って入る。
「ハワード、カオルだって風邪くらいひくわ。カオルはよく無理をするから疲労が溜まってたのよ」
今度はシンゴへ顔を向け説教を始める。
「シンゴは少し言い過ぎよ。今のはハワードが怒るのもムリないわ。冗談も度が過ぎると悪口と変わらないんだからね?」
ルナに諭され、2人のポルテージがみるみるうちに下降していく。
「ルナ、すげー……」
あのハワードさえも手懐けるかのように、瞬く間にケンカを鎮圧させたルナの凄さを目の当たりにし、クラスメイト達は感嘆の声を洩らした。
「今じゃ、俺達の中では当たり前の光景になってるんだけどね」
皆の反応にベルはクスリと小さく笑うと、話題の中心となっているリーダーへと視線を向けた。