記念作品

□50000hitキリリク小説
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某日、いつもの様に午後の授業が終わり、放課後を迎えた頃、帰ろうとするルナ達をハワードが呼び止める。

ハワード曰く、「いいものを見せてやるから、これから僕ん家に来いよ」とのこと。

どこか胡散臭さを感じながらも、多少の好奇心を優先させ、仲間達はハワード邸へと赴いた。

ハワードに案内され、広い邸内を歩くこと数分、とある部屋へとたどり着く。

室内へ入ると、そこにはいかにも怪しげな機械が置かれていた。

「ハワード、これ……何?」

疑いの目を向けながら、ルナはハワードへと問いかける。

「ふっふっふ……聞いて驚け!こいつはな、ハワード財閥の研究チームが総力をあげて生み出した、新世代型VRゲームさ!」

「それ、本当っ!?」

皆がポカンとする、シンゴだけが目を輝かせて得体の知れない機械へと駆け寄った。

「うわぁ〜!ヘッドマウントディスプレイが今までのとは全然違う!スクリーンの機能だけだったのを、ブレイン・マシン・インターフェイスの技術を応用して……」

うっとりとした表情をするシンゴの口から、小難しい専門用語が呪文の様に漏れていく。

「……シャアラ、シンゴの言ってる事、分かるか?」

「ううん……全然分からないわ」

メノリの質問に、シャアラは苦笑いをして答える。

「VRとはバーチャルリアリティの事。ヘッドマウントディスプレイとは、VRを実現させるためのゴーグル型スクリーンの事を言う。ブレイン・マシン・インターフェイスは、 脳波を解析して機械との間で電気信号の形で出入力するためのプログラムだ」

シンゴの言葉を要約するカオルに、皆が唖然とした顔を向ける。

「カオル、詳しいね?」

「前に読んだ本に出てきた言葉だったから、たまたま知ってただけだ。細かいシステムや機能の知識を述べれば、シンゴに遠く及ばない」

ベルの称賛の言葉に、カオルは淡々として答えた。

そこへ、ルナがばつの悪そうな顔でおずおずと手を上げる。

「あの〜、私だけだったら申し訳ないんですけど……つまりはこの機械は一体何なのか、いまいちよく分からないんですけど……」

ルナに同意する様に、「私も」「俺も」と皆がカオルに説明を求めた。

「つまりは、や。こいつを使えば、ファンタジーの世界に入り込んだ様な体感ができるっちゅー訳や」

「それ本当っ!?」

チャコが述べた補足を聞き、途端にシャアラが目を輝かせる。

「どうだ、スゴいだろ!?」

「えぇ!素敵っ!!」

シンゴとシャアラにとっては、この機械の存在はどうやら夢の様な代物らしい。

その光景を、仲間達は苦笑いをしながら眺めるのであった。







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『Fairy tale』








「まぁ、ゲームと言っても、まだ試作段階のものらしいから、RPGみたいな細かいプログラムを必要とするものは、まだ難しいみたいなんだ。今体感できるのは……何だ、童話ばっかだな」

機械のシステムを起動させ、モニターに表示されたリストを眺めるなり、ハワードが不平を漏らす。

「ハワード、まだそれやってないの?」

「ああ。だって、こういうのは1人でやってもつまんないだろ?」

孤立する寂しさを経験した事のあるハワードならではの考えである。

モニターを憮然とした表情で眺めるハワードを見つめ、仲間達はクスリと小さく微笑んだ。


「童話って、どんなお話が入ってるの?」

シャアラが興味津々にモニターを覗き込む。

「白雪姫、シンデレラ、船乗りシンドバット……あ、フランダースの犬も入ってる!」

「ちぇっ、もっと冒険物が入ってると思ったのにさ」

「そう言うなや。童話だとしても、本当にストーリーを体感できるんやったら、スゴい事なんやで?それを実用化させた研究者を褒めな」

いまだに不満を言うハワードを宥(なだ)めるように、チャコがフォローを入れる。

「ねぇねぇ!これにしてみない?」

リストを眺めていたシャアラが、仲間達へ呼び掛ける。

シャアラが指差す項目には……

「美女と野獣?」

「私、このお話好きなの!」

「ま、いっか。何の話でも」

童話しか無いのであれば、どれを選んでも同じだろ、と諦めたのか、ハワードはすんなりとシャアラの案を受け入れた。

他の者も異論は無い様で、皆が首を縦に振った。

その後、配役を決めるのに少し揉め、くじで配役を振り分け、ようやくHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を頭に装着する所へと至った。

ちなみにチャコは脳が存在しないため、接続コードを繋いでプログラムにアクセスする方法を用いている。

全員の準備ができたのを確認し、ハワードは起動のスイッチへと手を伸ばした。


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