記念作品
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「は!?2人とも、まだ付き合ってなかったの!?」
いつもの様に閉店したカフェの後片付けをしている時、ルナと共にホールの清掃をしていたシャオメイは、驚きの声をあげた。
「ウソでしょ……?あれだけ人前で堂々とハグしてながら……?」
「あ、あれは……感極まってというか……衝動的にというか……」
出来れば触れて欲しくなかった赤面体験を引っ張り出され、ルナは恥ずかしさで顔を赤くした。
「へぇ〜、ルナちゃんとカオル君、ハグしたんだ?」
食器を洗いながら、ニヤニヤするカトレアの視線を受け、ルナは嫌な汗をかいた。
カトレアとチャコは思考回路が似ている。
チャコがルナにやりそうなイタズラやからかいを、カトレアはカオルに対して行うのである。
本日はオフであるが、もしこの場にカオルがいたら、不機嫌オーラ全開となっていただろう。
「カオルは髪をバッサリ切っちゃってるし、2人の空気も去年と違うし……私がいない間に、一体何があったのよー?」
「まぁまぁ、ルナちゃんもカオル君も、それなりに色々大変だったのよ。温かい目で見守ってあげましょ」
訳知り顔のカトレアが、楽しそうにシャオメイを説得する。
正直あまり触れてほしくない時期の話題が出始めて来たため、この嫌な流れを断ち切るべく、ルナは咄嗟(とっさ)に話題を転換させた。
「そういえば、進級試験の勉強はどう?はかどってる?」
(逃げたわね……)
(もう少し引っ張りたかったけど、まぁ、しょうがないっか)
それも2人にはバレバレだった様で、苦笑いを浮かべながらルナの話題に乗るのであった。
「ん、まぁまぁかな。たぶん問題はないと思うけど」
「さすがはシャオメイね。私も、もう少し勉強ができる頭が欲しかったなぁ」
「そういえば、ルナって今、カオルに勉強教わってるんだっけ」
「うん。みんなは放課後にハワードん家で勉強会やってるんだけど、私はバイトを続けないと生活に影響するからね」
ルナは笑っているが、この年齢で学業・家事・アルバイト、全てを両立している学生は、彼女以外にいないだろう。
そんなハードな毎日を送っていながら、愚痴1つこぼさず、皆には笑顔で振る舞う。
『この先、きっとルナには敵わないだろう』
体育祭の時に抱いた思いは、今も変わりはない。
むしろそれを誇りに感じられる。
「頭の良し悪しなんて、どうでもいいじゃない」
「え?」
「アンタはそのままでいいのよ」
「???」
シャオメイの言葉の意味がいまいちよく分からず、ルナは首を傾げた。
そんなルナに、シャオメイは「なんでもないわよ」と言って微笑むのであった。
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『決闘』
「カオルには何の科目を教わってるの?」
「一番集中的なのはやっぱり数学かなぁ。文章問題になると、何の数式を使えばいいか混乱しちゃうのよね」
「分かるわ〜、私も学生の頃は数学がだいっきらいだったからね」
ルナ達の会話にカトレアが入り込む。
「カトレアさんは何の科目が得意だったんですか?」
「もちろん、体育よ!!」
シャオメイの質問に、カトレアは親指を立てて即答した。
「2人だって一番の得意科目なんじゃない?」
「まぁ……間違いじゃ」
「ないかな?」
カトレアの指摘に、ルナとシャオメイは顔を見合わせ苦笑いした。
「ところで、シャオメイってカオル並みに身体能力高いけど、何かスポーツでも習ってたの?」
「ん、まぁ……スポーツじゃないんだけど、護身用って事で父さんから強制的に拳法を習わされてたから」
「やっぱり〜?体育祭での動きを見た時から、何かしらの格闘技を習得してたんじゃないかって思ってたのよ〜」
きゃらきゃらと楽しそうに納得するカトレア。
「カトレアさんも何か武術を?」
「私、こう見えて剣道七段よ」
「「ええっ!!」」
カトレアから出た突然のカミングアウトに、2人は声をあげて驚く。
(み、見えない……)
(し、竹刀持ったら性格変わるタイプなのかしら……?)
その反応を待ってました、とでも言うように、カトレアは自慢気な顔で笑っていた。
「でも、この喫茶店、スタッフ全員が武芸を会得してるから、きっと強盗も真っ青ね」
「全員……?」
カトレアの言葉に首を傾げ、シャオメイはルナへと顔を向けた。
ルナが武芸を嗜(たしな)んでいるとは初耳である。
「ルナちゃん、最近カオル君から合気道を習い始めたんでしょ?」
「な、何で知ってるんですか!?」
公表していないはずの事実を言い当てられ動揺するルナを見て、カトレアは実に満足そうな笑みを浮かべるのであった。