記念作品

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宇宙港へと着陸した宇宙船から降りてくる沢山の乗客。

改札口を通り抜け、各々の目的の場所へと向かっていく群衆の中に、レノックスとアキラの姿があった。


「ん〜……やっと着いたわね」

長時間の座位体勢の疲れを取ろうとアキラが上に向かって体を伸ばす。

彼女の横にはボストンバッグを肩に提げ小さく笑うレノックスが立っていた。

「それでも、昔に比べたら随分と早くなった方だよ。科学の進歩する速さには驚かされるばかりだ」

「なーに、お堅いこと言いながらしみじみしてんのよ。ホント、レノって昔から全然変わらないわよね」

感慨深く呟くレノックスの後ろから、呆れた表情で声をかけたのは、チャコを上に乗せたスーツケースを引くカトレアであった。

「せやせや!今日はそういう小難しい話は無しにせな。せっかくの旅行なんやから」

「ははっ。いや、すまない。職業病なのか、ついな」

カトレアに便乗するチャコの言葉に、レノックスは笑って答えた。







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『Trip trap』








「ところで、ルナちゃんとカオルは?」

2人の姿が見当たらない事に気づき、アキラが辺りを見回す。

「宇宙船から降りるとき、混んどったからなぁ。人の波に飲まれてしもうたかもしれんなぁ」

「携帯に連絡してみよっか?」

「いや、来たみたいだ」

携帯を取り出すカトレアを制止し、レノックスは改札の方へ視線を向ける。

そこには荷物を抱えて、人混みから抜け出した少年と少女がいた。

「おーい、2人とも、こっちよー!」

カトレアが手を振って呼ぶと、2人はやや疲れ気味な表情を浮かべて駆け寄ってきた。

「ふぅー……お待たせしました」

一息つき、ルナは笑顔でお辞儀をした。

対するカオルは本当に疲れた様な深い溜息をついていた。

「……何でこんなに人が多いんだ」

「しょうがないわよ。今日から連休だし、私達と同じ考えの人がいっぱいいたって不思議じゃないわ」

「だったら尚更、こういう時期を避けるべきだろ」

「まぁまぁ、いいじゃない。宿も無事に予約出来た事だし♪」

言い合うアキラとカオルの間に割り込み、カトレアが笑って仲介に入る。

そんなカトレアに対し、カオルは疑惑の目を向けた。



そもそも、今回の旅行の企画者は、他ならぬカトレアである。

突然家に押し掛け、「みんなで旅行に行きましょ!」と既に予約済みの宿のチケットを提示してきた。

それはもはや、旅行への誘いなどではなく、参加の強要でしかなかった。

正直気乗りしないカオルであったが、家族旅行になるから、とアキラに言われてしまっては、断るわけにはいかない。

しかし、カトレアのサプライズ企画はそれだけに留まらず、更にはルナまで巻き込んだ。

当日、ロカA2の宇宙港で、カオル一行は、ルナとチャコに遭遇した。

聞けば、カトレアに予約済みのチケットを(無理矢理)渡された、との事。

かくして、カオルとルナの合同家族旅行が実現してしまったのである。



(……一体何を企んでいる?)

主犯であるカトレアを見つめ、カオルは警戒心を一層強めるのであった。


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