記念作品
□70000hitキリリク小説
2ページ/6ページ
宇宙港からエアタクシーで移動すること15分、カオル達は予約している宿へと到着した。
タクシーから降り、本日宿泊する旅館を見上げ、皆が感嘆の声を洩らす。
「ほぉ……」
「わぁ……素敵!」
「ええ所やなぁ」
「うん!私、こういう雰囲気大好き!」
「でしょでしょ?」
皆の反応を見て、カトレアが嬉しそうに聞き返す。
そして、唯一感想を述べていない人物へと顔を向けた。
「どう?カオル君」
「……いいんじゃないか?」
「素直じゃないなぁ」
不愛想に返答するカオルにも、カトレアは楽しそうに笑うのであった。
旅館の仲居に案内され、一同は客室へと向かった。
「こちらが『桜』になります。カトレア様とチャコ様のお部屋になります」
「ありがと♪」
仲居からキーを受け取り、カトレアはチャコを抱き上げた。
「え?チャコはマスターと一緒の部屋なの?」
首を傾げ、思わず尋ねる。
「ん?何か問題あるんか?」
「い、いや……問題は、無いけど……」
てっきりチャコは自分と同じ部屋とばかり思っていた為、違和感を感じてしまったルナであるが、特別チャコと違う部屋になろうと、何もおかしいことはない。
「ならええやんけ」
そう答えながら笑うチャコの顔に、ルナは何故か悪寒を感じた。
そしてその理由を、ルナはすぐに知る事となる。
「お隣が『桔梗』になります。こちらはルナ様とカオル様ですね」
「え!?」
「なっ!?」
仲居の言葉に、ルナとカオルが驚愕の声を上げる。
「ま、待て!何かの間違いじゃないか!?」
「え?い、いえ……確かにご予約の際、その様に部屋割りのご指定が……」
仲居が困った様に予約のデータを再確認する。
その返答で、カオルは理解した。
この旅行がカトレア(と、おそらくチャコ)によって企てられた『罠』である事に。
カオルがゆらりと振り返り、カトレアを睨む。
「……どういうつもりだ」
「どういうって、レノとアキちゃんは夫婦なんだから、一緒の部屋になっても何の問題もないでしょ?」
「だからって、俺とルナを同じ部屋にするのは問題ありすぎるだろ!」
「問題ってどんな?」
「……このヤロウ」
ぬけぬけと笑顔で聞き返すカトレアに、カオルの怒りのオーラが全身から沸きあがっていく。
それをひしひしと肌で感じ取っていたルナは、どうにか宥めようとカオルに声をかけた。
「お、落ち着いてカオル!せっかくの旅行なんだから。私なら大丈夫だから!カオルさえ、その……良かったら……」
言ってる途中で恥ずかしくなってしまい、ルナの声が最後には聞き取るのが困難なほどに小さくなっていた。
その様子を見て、沸点間際であったカオルの怒りもすっかり収まってしまった。
「あら、ルナちゃんってば、大胆♪」
「やっぱルナは天然やな」
そんな2人を見つめ、カトレアとチャコは想定以上の結果に、ほくそ笑んだ。
「もう……カトレアもチャコも調子に乗っちゃって……」
「放っておけばいいさ。何かあっても自業自得だしな。私達は私達で、温泉を楽しもう」
溜息をつくアキラとは対称的に、レノックスは小さく笑いながら、仲居から部屋のキーを受け取った。