記念作品

□70000hitキリリク小説
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宇宙港からエアタクシーで移動すること15分、カオル達は予約している宿へと到着した。

タクシーから降り、本日宿泊する旅館を見上げ、皆が感嘆の声を洩らす。

「ほぉ……」

「わぁ……素敵!」

「ええ所やなぁ」

「うん!私、こういう雰囲気大好き!」

「でしょでしょ?」

皆の反応を見て、カトレアが嬉しそうに聞き返す。

そして、唯一感想を述べていない人物へと顔を向けた。

「どう?カオル君」

「……いいんじゃないか?」

「素直じゃないなぁ」

不愛想に返答するカオルにも、カトレアは楽しそうに笑うのであった。





旅館の仲居に案内され、一同は客室へと向かった。

「こちらが『桜』になります。カトレア様とチャコ様のお部屋になります」

「ありがと♪」

仲居からキーを受け取り、カトレアはチャコを抱き上げた。

「え?チャコはマスターと一緒の部屋なの?」

首を傾げ、思わず尋ねる。

「ん?何か問題あるんか?」

「い、いや……問題は、無いけど……」

てっきりチャコは自分と同じ部屋とばかり思っていた為、違和感を感じてしまったルナであるが、特別チャコと違う部屋になろうと、何もおかしいことはない。

「ならええやんけ」

そう答えながら笑うチャコの顔に、ルナは何故か悪寒を感じた。

そしてその理由を、ルナはすぐに知る事となる。


「お隣が『桔梗』になります。こちらはルナ様とカオル様ですね」

「え!?」

「なっ!?」

仲居の言葉に、ルナとカオルが驚愕の声を上げる。

「ま、待て!何かの間違いじゃないか!?」

「え?い、いえ……確かにご予約の際、その様に部屋割りのご指定が……」

仲居が困った様に予約のデータを再確認する。

その返答で、カオルは理解した。

この旅行がカトレア(と、おそらくチャコ)によって企てられた『罠』である事に。

カオルがゆらりと振り返り、カトレアを睨む。

「……どういうつもりだ」

「どういうって、レノとアキちゃんは夫婦なんだから、一緒の部屋になっても何の問題もないでしょ?」

「だからって、俺とルナを同じ部屋にするのは問題ありすぎるだろ!」

「問題ってどんな?」

「……このヤロウ」

ぬけぬけと笑顔で聞き返すカトレアに、カオルの怒りのオーラが全身から沸きあがっていく。

それをひしひしと肌で感じ取っていたルナは、どうにか宥めようとカオルに声をかけた。

「お、落ち着いてカオル!せっかくの旅行なんだから。私なら大丈夫だから!カオルさえ、その……良かったら……」

言ってる途中で恥ずかしくなってしまい、ルナの声が最後には聞き取るのが困難なほどに小さくなっていた。

その様子を見て、沸点間際であったカオルの怒りもすっかり収まってしまった。

「あら、ルナちゃんってば、大胆♪」

「やっぱルナは天然やな」

そんな2人を見つめ、カトレアとチャコは想定以上の結果に、ほくそ笑んだ。

「もう……カトレアもチャコも調子に乗っちゃって……」

「放っておけばいいさ。何かあっても自業自得だしな。私達は私達で、温泉を楽しもう」

溜息をつくアキラとは対称的に、レノックスは小さく笑いながら、仲居から部屋のキーを受け取った。


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