頬に癌が見つかった時、
老齢なので手術は出来ないという
先生の判断の中どういう治療をするか話し合いました。
抗がん剤を飲むか、進行を遅らせる薬にするか。
抗がん剤は人間同様、副作用があるというので進行を遅らせる薬にしました。
が、臭いに神経質なチャチャは、ご飯に混ぜても、水に溶いても口にしてくれません。
液状の薬だったので、スポイトで口に入れ様としますが
癌が見つかる前に他の治療で毎日錠剤を飲まされていたのが余程嫌だったらしく
スポイトを手にする私を見るだけで逃げ出す有様。
先生に話した所、あまりストレスを与えても良くないと言う事で
投薬なしで経緯を見守る事になりました。
それから、痛みを感じると前足で頬を撫でるようになりました。
頻繁に撫で過ぎて段々毛が抜けていきます。
遂に殆んどの毛が抜けてしまうと、皮膚がすれて皮が剥けてしまうのです。
動物は舐めて治すと言いますが、舐め過ぎでは治る暇もありません。
病院で傷薬を貰ってコットンに塗り頬に貼り付けました。
日を追う毎に腫瘍は大きくなり痛みも増していったのでしょう。
前足では足らず後ろ足で頬を書くようになってしまいました。
その傷は深く腫瘍に圧迫された目から
常に流れる涙で乾けず最後まで治ることはありませんでした。
先生に相談すると痛み止めは錠剤しかないとの事。
腫瘍のせいで大きく口を開くことが出来なくなったので錠剤は飲ませられません。
人間用では疼痛用のパッチがあるのだから
猫用のもあるはずだ!
そう思ってネットで探しました。
先生にこういうのがあるみたいなのですが、
と言うと、取り寄せてくれました。
首の横の毛をバリカンで刈ってパッチを貼って貰い包帯を巻いて帰ってきました。
これで、痛みから解放される。
そう思うとほっとすると同時に
どうしてもっと早くこの痛み止めを探してやらなかったのだろう
と落ち込みました。
パッチを貼る様になってから大分楽そうで安堵しましたが
3度目のパッチを貼り替える2日前、チャチャの様子が急変しました。
痛みが増しているのが見ていてわかり、息も浅くなるのです。
一晩寝ずに付いていましたが
その晩は波があるようで痛みが治まると普通の呼吸に戻りました。
明日パッチを貰ってこよう。
しかし、翌日朝から呼吸は浅く、大声で鳴く様になりました。
午前中、主人に病院へ行ってもらい薬を貼り替えましたが一向に良くなりません。
チャチャを背中から抱きしめ薬の利くのを祈るように待ちました。
が、夕方になり夜になっても呼吸が深くなりませんでした。
今夜か、明日には旅立ってしまう。
そう感じました。
チャチャに感謝の言葉を告げると鳴いていた声は優しく小さくなり
喉を鳴らしている時と同じになりました。
朝から、彼女は「早くお別れを言ってよ!」と言っていたかのようです。
それから、楽しかった日々の思い出話をして娘に代わりました。
その後、また、チャチャの鳴き声が大きくなったので
「もうすぐパパが帰ってくるからね」と言いました。
その時、主人からの帰るコールが。
急いで戻るように告げました。
安心しておとなしくなったのかと、思ったその時、チャチャの体が跳ね上がりました。
そして激しい鳴き声。
私は痙攣するチャチャの体を抱きしめることしか出来ません。
主人が戻るまでに4回痙攣がありましたが、回を追う毎に体の反応が弱くなっていきます。
帰ってきた主人に付き添われて3時間後、チャチャは亡くなりました。
最後は穏やかに。
血と膿で汚れた体を洗面台で洗い主人と二人で乾かしました。
そして、和室の猫のベットに安置し簡単な祭壇をしつらえました。
硬直が始まった体を撫でてもなくなった現実を受け入れたくありませんでした。
しかし、細くあいた水色の瞳が
もうお別れなんだよ
と微笑んでいるようでした。


[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ