novel
□この瞳に映るのは
1ページ/5ページ
忍足は人を惹き付けるオーラがある。
胡散臭い眼鏡とは裏腹に、柔らかい態度や物言い。
穏やかな性格はまさに女のストライクゾーンだ。
そんな忍足だが、告白を受けた時の返事は決まって同じ台詞を言うらしい。
『おおきに。そやけど、今は誰とも付き合う気ぃないねん』
告白をした女生徒達から広がっていったこの言葉だ。
まず、そう言って断っているのは間違いない。
恐らく、告白してくる女の脚が気に入らないのだろう。
跡部は単純にそう思った。
「お前、どれだけ脚フェチなんだよ」
「は?」
部活を終えたある日。
跡部は机に向かって部誌を書きながら、シャワーを浴び終わった忍足へ言葉だけを放った。
さっぱりした様子で髪を拭っていた忍足だったが、向けられた内容に手が止まる。
しかし、跡部はシャーペンを動かす手は動いたまま。
「なんやねん、いきなり…」
「お決まりの断り方が校内に広がってるぜ」
「あー…あれな。そやけど、自分かて好きな奴以外とは付き合いたないやろ?」
「まぁな」
忍足は自分のロッカーを開き、話しながら着替えを始めていく。
部誌を書き終えた跡部の手が止まり、顔を上げて忍足の横顔を瞳に映した。