今日は朝から雨、雨、雨。
道路には大小の水溜まりが出来ていて、車が横切る時は油断が出来なかった。
室内で可能な練習メニューを終えた後、部室で黙々と部誌に文字を綴っていた時だ。
1人の影が手元に差し掛かった。
その影が誰のものかなど、わざわざ確認しなくても分かる。
何を言いたいのかも例外ではない。
「もう終わる」
「急がんでええからな」
問うよりも先に答えた跡部に双眸を細め、腕を伸ばし指通りのいい髪を梳き撫でた。
跡部は気安く触れられることを嫌う。
しかし、心を許した忍足は別だ。
早く帰宅しようと、残りの空欄部分にペンを走らせ、10分足らずで終わることが出来た。
外は未だに雨が降り、止む気配はない。
どんよりとした薄暗い空を見上げていた跡部の隣で、バサッと傘を開ける音が鳴る。
その傘は勿論、跡部に向けて傾けられた。
「ほな帰ろか。送ったるから」
「ああ」
所謂、相合い傘というものだ。
最初こそ抵抗があったものの、今ではこうして帰ることが普通になっている。