novel
□はじまり
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予想外もいいところの跡部の発言。
気が付けば足が勝手に動き、両腕を体へ回し跡部を抱き寄せていた。
突き放すこともなく、そうしていろと言わんばかりに忍足の制服を強く握る。
その仕草がまた、愛おしさを増加させた。
「今更嘘でしたっちゅうのは無しやで」
「言う訳ねぇだろ、バーカ」
このままキスをしたいという欲望が忍足の中に生まれる。
しかし、腕の中にふと違和感を覚えた。
「?跡…って、」
跡部の手から力が抜けただけではなく、全身から力が抜けていく。
それに気付き、咄嗟に腕を脇下に入れ支えた。
「どないし………寝とる」
何かあったのかと顔を窺い見れば、瞼を閉じ規則正しい呼吸を繰り返す跡部がいた。
最初に指摘した通り、あまり寝ていなかったのだろう。
その理由が自分のせいだと思うと、不謹慎だと分かるものの嬉しいと感じずにはいられない。
忍足は起こさないよう地面に腰を下ろし、膝を枕代わりに跡部を寝かせた。
風邪を引かないよう、自らが羽織る上着を掛けてやる。
「…これからは跡部の傍におる。絶対に離れへんから覚悟しぃや」
指通り良い髪を優しく梳きながら、安心した表情で眠る跡部にそっと囁いた。
二人はまだ始まったばかり────…
>>終わり