教師かと冷静に考えていれば、扉の先には会いたくなかった人物の姿が視界に映る。
「跡部?」
「………」
聞き慣れた甘ったるさを強める低い声。
何も言わず目を反らした跡部に歩み寄り、真正面に片膝をついて顔色を窺い見る。
「どないしたん?めっちゃ顔色悪いで」
(誰のせいだと思ってんだよ…)
「ちゃんと寝てないんちゃう?飯も食うてないんやろ?」
避け続けていた日などなかったように、以前と変わらぬ口調で話し掛ける忍足。
それが尚更、跡部の不機嫌を煽る要因だともしらず。
こんな時だけ話し掛ける意味が分からない。
「……せぇ」
「なん?」
「五月蝿ぇんだよ」
「心配しとるだけやん」
相手が忍足でなければ、確実に不機嫌となって立ち去っているに違いない。
だが、次の言葉で忍足も声を荒げた。
「誰もンなこと頼んでねぇだろうが」
「言わんから余計に心配なんやろ!」
今まで聞いたことのない忍足の怒声。
流石に驚いた跡部は、反らしていた視線を目の前にいる忍足に向けた。