忍足の表情には怒りだけでなく、瞳からは悲しみが滲み出ている。
「…好きって言うたんが原因やったら謝る」
違う───‥
「お前にはもう近付かへん。それでええやろ?」
違う…
「飴ちゃん置いとくから食べてや。ほなな」
跡部の傍らに袋に包まれた飴が置かれた。
付いていた膝を持ち上げた忍足は踵を返し、振り返ることなく足を進めて去っていく。
「て、めぇ……いい加減にしやがれ!!」
地面に置かれた飴を掴んで、落としていた腰を持ち上げた跡部は、遠ざかる背中目掛け渾身の力を込めて飴を投げつけた。
コントロールは上々で、飴は見事背中にクリーンヒット。
「いッ!…ったぁ〜。何すんねん、めっちゃ痛いやんか!」
あまりの痛さに背中を反る忍足に向かい、次は跡部が怒声を放った。
「一体誰のせいだと思ってんだ!」
「は?意味分からん…。そやから、」
「俺が好きなんだろ。だったら逃げんじゃねぇ!」
「跡部…?」
「傍にいろ!これは命令だ!」