novel
□HAPPY NEW YEAR'10
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大晦日から元旦へ日付が替わるまで残り僅か。
面倒くさいと言う跡部を引き連れ、人混みでごった返す神社に来ていた。
「帰る」
「あかんて。お詣りもおみくじもせずに帰ったら、何しに来たんか分からんやん」
「他力本願は趣味じゃねェ。第一、お前が無理矢理連れて来たんだろうが」
年を無事に越せること自体は良いことだとは思う。
だが、好き好んで人混みに紛れ込もうとする連中の気が知れなかった。
「まあまあ、そない言わんと並んどき」
帰りたかった本当の理由は混んでいるからではない。
口にしないだけで、忍足は跡部を庇うように歩いていた。
だが、それにも限界がある。
四方八方から突発的な波が来たり、順調に進んでいると思えば足を踏まれる始末。
庇われている跡部がそれだけ受けているなら、庇っている忍足への負担は余計だろう。
しかし、当の忍足と言えば…。
「…ヘラヘラ笑いやがって。この状況の何が楽しいんだよ」
. .
「正確には嬉しいやね。これが」
笑顔で“これ”を指すものが何か分かった瞬間、跡部は顔を僅かに朱に染めた。
その反応は跡部にしては珍しい。
忍足が言ったのは、下が向けない程の混みようを利用して繋いでいた手。