novel

□HAPPY NEW YEAR'10
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愛おしい眼差しを向け、繋ぐ手に力を加えた。




「……」




すぐに応えはしないものの、力を加えようとする跡部の指が感じ取れる。

それだけで忍足は満足だった。




「顔赤いで、自分」

「煩ぇ。やっぱり離す」

「絶対離さへん。手ぇも自分の心も、全部俺だけのもんや」

「……クサい台詞」




眉根を寄せるその顔は不愉快からくるものではなく、TPOをわきまえろといった照れからの表情だ。

それから大分時間を費やし、漸く順番が回ってきた。




「賽銭箱には5円玉。札ちゃうで」

「っ、分かってる」




跡部の指が札入れに向かう動きを見逃さず、すかさず忍足は指摘をした。

取り出した5円玉を賽銭箱へ投げ入れ、2人で紐を動かし両手を合わせ目を閉じる。

お互い、願うことはたったひとつ。

合わせた手を離せば跡部の手を掴み、次の人に場所を譲る為に横へ移動。




「自分は何願ったん?」

「言う訳ねーだろ」

「残念やわぁ」




予想通りの回答を受け、忍足は掴んでいた手を離した。

 
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