novel

□全てが欲しい
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「なぁ、急にどないしたん?」

「………」




不器用ながらにも付き合い始めて2ヶ月。

行為に流れ込ませたのは忍足自身だったが、それは今に始まったことではない。

未だかつて中断されたこともなかった。

何だかんだ言いつつ、最終的にはいつもお互いがお互いを求め合っていた。

にも関わらず、この日初めての中断を言われるなど予想外もいいところだ。




「言うてくれな分からんやろ?」




跡部は顔を横へ背けたまま、目も合わさず口も閉ざしたまま。

話してくれなければ理解することさえ叶わない。

本当は身体を重ねることが嫌だったのだろうか?

そう思っていた時だった。




「……がね…」

「え?」

「何でその胡散臭い眼鏡、いっつも掛けたままなんだよ」

「胡散臭いて…」




不服を全開にする声と横顔。

指摘を受けて、そこで漸く中断の理由が分かった。

忍足は跡部と付き合い始めてからも眼鏡を外したことがない。




「それに…」

「なん?ちゃんと言うて」

「……キス、して来ねぇし」




あまりにも可愛いその発言に、幸せを噛み締める忍足の表情が緩む。

 
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