「なぁ、急にどないしたん?」
「………」
不器用ながらにも付き合い始めて2ヶ月。
行為に流れ込ませたのは忍足自身だったが、それは今に始まったことではない。
未だかつて中断されたこともなかった。
何だかんだ言いつつ、最終的にはいつもお互いがお互いを求め合っていた。
にも関わらず、この日初めての中断を言われるなど予想外もいいところだ。
「言うてくれな分からんやろ?」
跡部は顔を横へ背けたまま、目も合わさず口も閉ざしたまま。
話してくれなければ理解することさえ叶わない。
本当は身体を重ねることが嫌だったのだろうか?
そう思っていた時だった。
「……がね…」
「え?」
「何でその胡散臭い眼鏡、いっつも掛けたままなんだよ」
「胡散臭いて…」
不服を全開にする声と横顔。
指摘を受けて、そこで漸く中断の理由が分かった。
忍足は跡部と付き合い始めてからも眼鏡を外したことがない。
「それに…」
「なん?ちゃんと言うて」
「……キス、して来ねぇし」
あまりにも可愛いその発言に、幸せを噛み締める忍足の表情が緩む。