「っ…ンだよ」
眉を釣り上げ、強気な態度を見せる。
しかし、そんなものが忍足に通用する筈はない。
無言のままスッと腕を伸ばし、跡部の体を挟むよう壁に両手を付いて逃げ場を奪う。
流石の跡部もこれには驚きを見せた。
「ちょっ…、退けよ」
「気になるかって聞いとるんやけど」
「気にならねーから退け!」
紡がれた答えは跡部らしさが滲み出ていて、再度忍足の口元が緩んだ。
そして、肘を曲げて跡部に密着していく。
「っ…!」
反射的に双眸をキツく閉じた跡部。
しかし、動いていた空気が途中で止まったことに気付いた。
瞼をゆっくり押し上げ、視線を上げたその先には忍足のアップの顔が双眸に飛び込む。
初めて間近で見る忍足の顔は、女生徒が騒ぐ理由が分かる程に整っている。
跡部は動くことも言葉を紡ぐことも忘れて固まったまま。
その代わりに息を飲んだ。
「………」
「好きな奴おるから、そいつ以外には興味ない」
「…あ?」
不意に紡がれた言葉の意味が分からない。
何を言っているのかと聞き返そうとした時、先程までの会話を思い出した。