novel

□この瞳に映るのは
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そうすると、忍足が女生徒を振る時に使い始めた新しい言葉だと理解する。




「好きな奴…出来たのかよ」

「そや」




迷いない肯定する言葉を聞けば、跡部の胸に小さな痛みが走った。

しかし、理由が分からない。

忍足に黄色い声を上げる女生徒は多くいる。

中学生にもなると、好きな異性が現れても何の不思議もないだろう。

黙ったまま1人で思考を巡らせていた時、不意に忍足が跡部の髪を梳き撫でた。




「勝手に触るんじゃ…」

「早よ気付いてな」

「何で俺がお前の好きな女を見付けなきゃならねぇんだ、アーン?」

「その姫さん、めちゃくちゃ鈍感やねん」




問いに対しての答えになっていない忍足の言葉。

今、跡部は自分が複雑な表情を浮かべているなど気付いてないだろう。

眉間には皺を増やし、瞼を伏せ視線は地面へ落ちたまま、1人で何かを考えているようだ。

そんな跡部の姿を見て、忍足は両腕を体に回して胸元へ引き寄せた。




「!?おし…ッ」




予想外の出来事に驚き、蒼碧眼を見開いて体を硬直させる。

間近で香る忍足の匂いは酷く落ち着く。

 
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