novel

□この瞳に映るのは
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強張っていた跡部の全身からは、無意識の内に力が抜けていき、自然と身を預ける形になっていた。

それに気付いた忍足はと言えば、体に回していた腕に力を込める。

互いの顔が見えない今、忍足は自分の顔がニヤけているに違いないと思った。




「早よ気ぃついてな、俺の姫さん」

「え…?」




忍足の紡いだ言葉が頭の中で木霊する。

何故、自分は抱き締められているのか?

何故、自分が気持ちを知る必要があるのか?

様々な疑問が、湧き水のように次から次へと出て来て止まない。

分かることと言えば、忍足の腕に抱かれていることだけ。

抱き締められて数分後、漸く跡部は解放された。




「ほな、また明日」

「あ、あ…」




何事も無かったように去っていく忍足の背中を、跡部はただ黙って見送る。

殴ろうと思えば殴れていた。

しかし、否定出来ない胸に感じる温かなモノ。

それが特別な感情、言葉で表現するなら“愛”と呼ばれるのだと跡部が自覚するのは、もう少し後のお話───…




(おい忍足)
(何や?)
(俺はお前が…)
(ストップ。その先は俺に言わせて)



>>終わり

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