(あの跡部が…?)
「愛されてますね、忍足さん」
「忍足、ちょっと付いて来い!」
固まる忍足に向かって、張りのある跡部の声が響く。
ハッと我に返る忍足と、跡部の不機嫌の理由が分かる鳳は笑みを浮かべた。
「あ、ああ、今そっち行くわ」
「長太郎、考えたんだけどよー」
「今行きます!それじゃあ、俺も宍戸さんの所へ戻ります。行ってらっしゃい」
「おおきに、鳳」
笑みを滲ませ鳳と別れれば、腕を組んで待つ跡部の方へ歩み寄った。
そしてそのまま人気のない場所へ誘導させられるなり、跡部は強引に忍足を引き寄せ唇を重ね合わせた。
噛みつくようなキスでいて、どこか優しさを感じる。
「……鳳と何話してやがった」
離れた口から紡がれた問い掛け。
隠す必要は皆無だと、先程聞いた内容について忍足は素直に答えた。
「マニアがどんなんか聞いてたんや」
「余計なこと教えやがって…」
忍足の言葉に跡部は眉間に皺を刻む。
マニアだと話したことは間違いだった、そう感じているように見える。
だが、忍足にとっては実に嬉しいこと。