novel
□恋愛タイプ
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「鳳にはもう言っちまったから仕方ねぇが、これ以上他の奴には話すな」
「俺の頼み1つ聞いてくれたら」
「テメェ…」
不快感を露わにする跡部は予想の範疇。
だからこそ、忍足は前言撤回をしない。
暫く睨み付け続けるものの、考えを変えるつもりがないと悟れば、跡部は不満気なまま口を開いた。
「っくそ…、だが内容による。言え」
「跡部からキスするんて珍しいやん?せやから、もう1回して欲しいわ」
周囲が聞けば他愛ないことだろう。
しかし、忍足からして見れば重要だ。
普段から身体を引き寄せ、キスをしようと行動するのは忍足自身。
さっきも跡部に話したように、迫られるのは稀だった。
この機会を逃せば、次はいつ跡部からしてくれるのかは分からない。
「ええやろ?」
「…本当に変な奴だな、お前は」
紡がれる内容とは裏腹に、目の前の跡部の口許には緩く弧が浮かんでいた。
開いた距離を縮めようと、再び忍足の首へ両腕を伸ばす。
微か触れ合う程に近くなった互いの顔。
「まだだ、まだ足りねぇ。もっと俺に堕ちろ、忍足」
そう言うなり、ゆっくりと重なり合う唇。
先程とは違った甘いキスを感じれば、忍足の両腕も自然と跡部の腰に回る。
それから暫く、2人はキスに酔いしれた―──…
>>終わり(追記→)