何を言うでもなく、鞄を掴み部室から出て行ってしまった。
それからと言うもの、忍足は跡部を避けるようになり…今に至る。
酷いことを言ってしまった自覚はあるものの、なかなか話し掛ける機会に恵まれない。
そんな状況だからこそ、今の忍足が告白に対してどういった返事をするのかが気になってしまう。
不本意ながら、跡部は忍足の後を追い掛けた。
「……せん。大切な休憩中に呼び出してして」
「気にせんでええよ。それより、さっき言うとった話っちゅうんは何?」
人があまり行き来しない校舎の裏。
告白するには取って置きの場所だ。
2人を見つけた跡部は、視界になる壁を背に息を殺して聞き耳を立てる。
(何やってんだ、俺…)
「その…忍足先輩、今好きな人とか…いますか?」
「いや、おらんで」
「っ!?」
我が耳を疑いたくなる発言に目を見開く。
考える間もなく、あっさりと否定をする声が耳から離れない。
それからも何か言葉を重ねている様子だったが、右から左に流れてしまう。
震える自分の足を叱咤し、跡部はゆっくりとその場を離れた。