「侑士遅ぇー!」
「堪忍、堪忍。ちょお呼び出されとってん」
「次また遅れたら、罰として唐揚げ作ってもらうからな」
「そないな罰聞いたことないで」
ぶつぶつ文句を言う向日に、笑いながら歩み寄る忍足は普段と変わらない。
あの女と付き合うことにしたのか?
こんな風に過剰に気にして、らしくなく意識が散漫していたせいだ。
「わぁあああーッ!!」
「跡部避けろ!」
「部長危ない!」
「あん?何言っ…て……」
突然の叫び声が跡部に集中する。
その理由が分からず、訝しげな顔をしたのも束の間だった。
後頭部に向かって来る球に反応が遅れ、鈍い衝撃と共に目の前が真っ暗になっていく。
スローモーションのように傾く体。
――――…とべ…!
遠くから愛しい声が聞こえた…気がした。
* * * * * * * *
暗闇に落ちていた意識が浮上する。
うっすら瞼を持ち上げれば、見慣れた天井が目に映った。