「忍足…」
「テニスボールが自分の頭にヒットしてん。あと、貧血やって保健医が言うとったわ」
道理で腫れている訳だ。
硬式のボールが勢い良く当たれば、痛みが残っていない方が逆におかしい。
それよりも、理解が出来てないことが残っている。
「何でお前の家に…」
「普段乗って帰っとる車あるやろ?あの運転手に言うて、俺んとこで降ろすよう頼んだんや」
「………な、んで…だよ」
「跡部?」
説明はされたものの納得がいかない。
告白されていた時、忍足は確かに好きな人などいないと断言していた。
特別な感情を抱いていないなら、面倒を見続ける必要はどこにもない筈だ。
「わざわざ介抱すんじゃねぇ」
「何でそないなこと言うん?」
「好きじゃねーんだろ、俺のこと。だったら、使用人に任せれば良かっただろ」
「は?……あ、今日のあれ…まさか聞いとったん?」
知人が倒れて心配する気持ちは分かる。
だが、まるで付き合ってる時のように優しく介抱されるのは辛いだけだ。
嬉しくも何ともない。
無意識の内に感情が高ぶり、じわりと目頭が熱くなって視界が歪む。