novel

□Rain ―雨―
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朝から雨が降っていたにも関わらず、傘を忘れる人間など1%にも満たないだろう。

跡部の場合、忘れた訳じゃなかった。

ただ、故意に持ってこなかっただけ。

雨は鬱陶しいけれど、1本の傘に2人で収まって帰ることは嫌いじゃない。




「―――跡部」

「何だよ」




雨音が傘に弾かれる音が響く中、不意に呼ばれた跡部は軽く視線を上げる。

当の呼んだ本人は、真っ直ぐ前を向いたまま。




「今週の土曜、ウチに泊まりに来ぇへん?」

「お前の家に…?」




付き合い始めて日が浅いこともあって、未だに忍足の家に行ったことがない。

忍足もまた、家に跡部を呼ぶタイミングを見計らっている最中だった。

多少驚きはしたものの、躊躇う必要は皆無だ。

驚きの表情から、徐々に笑みが滲み出てくるのが分かる。




「いいぜ。仕方ねぇから泊まりに行ってやる」

「ほんま?ほな、夜は跡部の為に腕振るうわ」

「フッ。満足出来なかったら帰るぜ」

「そらきっついなぁ〜」




泊まりの日について話に花が咲き、気付けば跡部の玄関前に辿り着いた。

 
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