名残惜しいけれど、土曜のことを考えれば大して気にならない。
「温かくして寝るんやで」
「ガキ扱いすんなっつってんだろ」
「はははっ。ほなな」
「ああ。気を付けて帰れよ」
背を向ける後ろ姿を見送っていた時、ふと違和感を覚えた。
その後、跡部は自分の両肩や背中に調べる。
(…濡れてねぇ)
今までは車の送迎だった為、雨だろうと晴れだろうと関係ない。
そのせいで、今の今まで気付かなかった。
遠くなっていく忍足の片方の肩や腕を見ると、あからさまに濡れているのが目に付く。
よくよく帰路を振り返れば、忍足はずっと車道側を歩き、自宅に着くまで濡れないようにしていたのだ。
気付かないところで、守ってくれるスマートな行動が胸を打つ。
「――…侑士!」
突然下の名前で呼び止められた忍足の顔は、笑いが出てくる程におかしかった。
「土曜、楽しみにしてるぞ」
「俺もや。約束忘れたらあかんで」
「バーカ」
雨の日も嫌なことばかりじゃない。
西の空を見上げれば、雲の隙間から光が差し込み始めていた。
明日はきっと、晴れ。
>>終わり