novel

□Rain ―雨―
3ページ/3ページ



名残惜しいけれど、土曜のことを考えれば大して気にならない。




「温かくして寝るんやで」

「ガキ扱いすんなっつってんだろ」

「はははっ。ほなな」

「ああ。気を付けて帰れよ」




背を向ける後ろ姿を見送っていた時、ふと違和感を覚えた。

その後、跡部は自分の両肩や背中に調べる。




(…濡れてねぇ)




今までは車の送迎だった為、雨だろうと晴れだろうと関係ない。

そのせいで、今の今まで気付かなかった。

遠くなっていく忍足の片方の肩や腕を見ると、あからさまに濡れているのが目に付く。

よくよく帰路を振り返れば、忍足はずっと車道側を歩き、自宅に着くまで濡れないようにしていたのだ。

気付かないところで、守ってくれるスマートな行動が胸を打つ。




「――…侑士!」




突然下の名前で呼び止められた忍足の顔は、笑いが出てくる程におかしかった。




「土曜、楽しみにしてるぞ」

「俺もや。約束忘れたらあかんで」

「バーカ」




雨の日も嫌なことばかりじゃない。

西の空を見上げれば、雲の隙間から光が差し込み始めていた。

明日はきっと、晴れ。





>>終わり

前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ