novel.2
□新年も隣にはキミ
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―――――2013年1月1日 00:00
テレビでは初詣に出掛ける人、初日の出を見に行く人でごった返している。
跡部と忍足はというと、2人きりの空間で肩を寄せ合いながらその情景を眺めていた。
なかなか前に進めず、人が溢れかえるあの場所にいた過去を思い出す。
ブラウン管を通して見ていると恐ろしいくらいの人混みだ。
それも味だと言う人がいるのも事実だが。
「凄いな」
「新年が来たっちゅう感じがあってええやろ?」
「苦しかった記憶が蘇るぜ」
「今年は?」
「…満足だ」
どう思っているか知りながらの質問に間を置きつつ、跡部は忍足が期待している通りの返答を口にした。
まぁ事実、こうして満足しているから嘘ではない。
相手が忍足だったからこそ人混みにも耐えたが、正直もう足を運びたくはないというのが正直なところだ。
誰にも邪魔されない空間で、2人で年越しを迎えたかった。
テレビではアナウンサーが人混みで潰されていたり、ゲストから色々な茶々を入れられている。
それを眺めていれば、足に乗せていた手に忍足が手を重ねてきた。
視線を隣へ移すと、愛おしいと聞こえてきそうな優しい笑みを浮かべていた。
「明けましておめでとう、景吾」
「フッ。今年も宜しくしてやる」
「来年も一緒におれることがめっちゃ嬉しい」
「俺もだ、侑士」
一方的に触れていた忍足の手に、跡部自ら指を絡めて握り締める。
離したくない、離す気などないこのポジション。
そう思うのは跡部も忍足も同じだ。
2人共に幸せに浸りながら、跡部はゆっくり瞳を閉じた。
キスの合図。
忍足は互いの距離を縮め、薄く開かれた跡部の唇へ自分のそれをしっとりと包み込むように重ね合わせた。
誰よりも愛おしい貴方へ――――…
>>終わり