novel
□愛の副産物
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跡部の人気が半端なく凄いのは今に始まったことじゃない。
例え本人から好きだと言われていても、何をどうしても湧き上がってくる感情はある。
信じてる、信じていない以前の問題だ。
「…侑士、マジで顔が怖いって」
隣でそう言うのは、跡部との仲を応援してくれている仲間の1人である向日だった。
先程から女生徒に取り囲まれてしまっている跡部を見て、恋人である忍足が苛立ちを抱かずにはいられない。
同性同士という大っぴらに出来ない関係。
だからこそ、本当なら跡部を連れ去りたい衝動を懸命に抑えていた。
しかし、気を引こうとする女生徒の声や仕草が苛立ちに拍車をかける。
そんな中、1人の女生徒が跡部へ手を伸ばす。
それをきっかけに、我先にと跡部に触れるべく多数の手が差し伸べられていく。
プチッ―――…
何かが頭の中で切れた音がした。
「あっ、おい侑士!」
後ろから聞こえる向日の声を無視し、女子が群がる方向へ早足で近付く。
忍足が近付いてくることに気付いた女生徒は黄色い声を上げつつ、ご丁寧に跡部へ辿り着く為の道を作っていった。
普段とは違う不機嫌さ漂う空気に跡部が気付かない筈がなく、驚いたような表情をしている。
だが、今はそんなことはどうでもいい。