novel

□偶には、な。
1ページ/6ページ



目の前には書類に向かったまま、かれこれ1時間以上無言の跡部の姿。

邪魔にならないよう、忍足は黙ったままソファで小説を読んでいた。

それから更に時間が経過。




(やっと終わった…)




ふと顔を上げた跡部が目にした光景は、いつの間にかソファに横たわり眠っている忍足の姿だった。




「………」




起こす気にならず、椅子から立ち上がった跡部は忍足に近付いた。

ソファ前で片膝をつき、整った息遣いに耳を傾ける。

薄く開いた忍足の唇。

呼吸の度に小さく上下する身体。

いつも愛を囁く唇に引かれ、気付けば跡部は自然と口付けていた。

ハッと我に返り、恥ずかしくなって顔を上げようとするものの、全く離れることが出来ないことに更に驚く。




「!?っ、んん…」




離れられない理由は簡単だった。

跡部の首に回された忍足の腕が、それを阻止していたから。




「ばっ…、おし……」

「襲って来たんは自分やろ?」




何事もないよう、微かに唇を離すと幸せそうに微笑む忍足。

その瞳と低音ボイスに脳は刺激される。

いつしか跡部の抵抗もなくなり、互いが互いを求める深い口付けへと変わっていく。

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ