目の前には書類に向かったまま、かれこれ1時間以上無言の跡部の姿。
邪魔にならないよう、忍足は黙ったままソファで小説を読んでいた。
それから更に時間が経過。
(やっと終わった…)
ふと顔を上げた跡部が目にした光景は、いつの間にかソファに横たわり眠っている忍足の姿だった。
「………」
起こす気にならず、椅子から立ち上がった跡部は忍足に近付いた。
ソファ前で片膝をつき、整った息遣いに耳を傾ける。
薄く開いた忍足の唇。
呼吸の度に小さく上下する身体。
いつも愛を囁く唇に引かれ、気付けば跡部は自然と口付けていた。
ハッと我に返り、恥ずかしくなって顔を上げようとするものの、全く離れることが出来ないことに更に驚く。
「!?っ、んん…」
離れられない理由は簡単だった。
跡部の首に回された忍足の腕が、それを阻止していたから。
「ばっ…、おし……」
「襲って来たんは自分やろ?」
何事もないよう、微かに唇を離すと幸せそうに微笑む忍足。
その瞳と低音ボイスに脳は刺激される。
いつしか跡部の抵抗もなくなり、互いが互いを求める深い口付けへと変わっていく。