りくえすと。

□おたわむれ。
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最初に感じたのは、香りだった。

続いて、鼻にかかった甘い声。

「ご機嫌よう、へ・い・かvV」

昼休みにおれの執務室を訪問したのは、紛れもなく前魔王であるツェリ様―――
おれの恋人の母親だった。
本日の出立ちもお美しい。例によって胸と脚に深いスリットの入った、赤いベルベット地のドレス。胸の下はフリンジになっていて、時折綺麗なおへそが覗く。


「ねぇ陛下、最近息子とはどうなの?」
ハニーブロンドの巻き毛がおれの頬を擽る。
って……
ツ、ツェリ様近い!!近いです!!
香りだけでくらくらしそうになるのを、なけなしの理性を総動員して抑える。
否応なしに激しくなる鼓動をごまかすように声を絞り出した。
「ヴ、ヴォルフとは」
「あぁらん、違うわ」
上擦った声は即座に否定され、ツェリ様はおれの耳に唇を寄せる。


コンラートのことよ、と、

前魔王陛下は囁いた。



「―――――――!!!」

「あぁらん陛下、か〜わいいvV」

――バレていた。完全に。

頬が熱い。うぅ、今の顔じゃ絶対説得力ないけど…一応、否定する義務があるよなコレ…
なんといってもおれは(公式には)ヴォルフラムの婚約者だ。コンラッドが事あるごとにおれたちの関係をバラそうとしているが、それは全て阻止してきたはず。

……よし!!ここは白を切り通すしかない!!

「いやおれはコンラッドとはそんな」
「陛下、隠しても駄ぁ目」
内緒話をするように、薔薇色の唇に白魚の人指し指が当てられた。

「ふふvVあなたたちの態度…特に陛下の態度を見ていれば気づかないほうがおかしくてよ?」


………原因、おれ?

もしかしなくても態度に出てたのっておれのほうなのか〜〜〜!?








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