たんぺん。

□獅子の見た夢
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上着一枚羽織ることなく、簡素な夜着のまま、コンラッドは一人バルコニーに出た。
秋口の風は少々肌寒い。しかし今の彼には、それが心地よくさえ思える。
だって、そうだろう?
夜にも秋晴れという表現を使うのだろうか、静かに顔を出した大きな月が、瞬きもせず彼をじっと見つめている。
コンラッドはしばらく月と見つめ合い、それから目を閉じた。茶色の髪を、風がもてあそぶに任せる。
ぼんやりとした月の残像に、忘れえぬ人の姿が重なる。
白く、優しく、美しい、…
「ジュリア…」
きみは…
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