たんぺん。

□実習
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おれは今、生物準備室の前にいる。
というのも、入学以来順調に右肩下がりを続けていた成績が、先日のテストでついに禁断の一線を越えてしまったからだ。
具体的にいうと、赤点。
かくしておれはマンツーマンでの留年救済措置、別名追試の前の補習授業を受けるために、こうして単身やってきた、というわけだ。
冬の空気は冷えきっていて、ドアノブにかけた手が凍傷になりそうなほどだ。
ゆっくりとドアを開けると、入り口を狭めるように置かれた錆の浮いた本棚の奥から、見知らぬダークブラウンの髪が覗いた。
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