歪んだ空

□暁に立つ
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「この盗っ人が!!」

大通りに突然罵声が響く。

ざわり、と行き交う人々がどよめいた。


可哀相に、と顔を顰めたおばさんに何があったと尋ねれば

「あぁ、落とした財布をただ拾っただけなんだよ」

見れば裕福そうに肥え太った男と
財布を持った子供が一人。明らかに慶の荒民(なんみん)と分かる、細い腕、ボロボロの服。



「汚ねぇガキが」
「物乞い風情で」

所々聞こえる男の声は聞くに堪えられるものではなかった。


見るに見兼ねた一人が
声をあげれば
「やめな。その子はあんたが落とした財布を拾ってくれたんだよ。」

「そうだ、いい大人が」
幾つかの賛同が返ってきた。

回りの雰囲気に、自分の分が悪くなったのを察して、チッと舌打ちをした。

「汚ねぇ餓鬼が触るな
さっさと渡しやがれ」


そう言うと腹いせにだろう、子供を突き飛ばして去っていった。





 
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