歪んだ空

□暁に立つ
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その日、市井におりていたはずの六太が珍しく日もまだ高いうちから帰ってきた。

その顔は暗い。

何かあった事は明白で。

「早かったな」

「……うん」


「どうかしたか?」

聞いたのが意外そうに顔をあげたがすぐにまた俯いた。


「子供がいてさ…」

かい摘まんで話ながら思い出すのは、
痩せた身体。
理不尽な出来事の前に泣きも怒りもせず、ただ男を見つめていた真っ直ぐな瞳。


「突き飛ばされたとき、怪我したんだと思う。血の臭いがして…」

「帰ってきた訳か」

こくり、と頷いた半身の瞳が潤んでいるのは気のせいではないだろう。

「ほんと、まだ子供だったんだぜ?骨と皮しかないような細い体だったんだ…」

慶の民が憐れで、それを蔑むのが自国の民だと言う事が苦しくて…
六太は胸元を握りしめた。







 
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