その他×陽子
□どうか
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「陽子!」
桂桂が中庭にこの宮の主を見つけて駆け寄って行く。
景台輔と隣国の王様、台輔がいたけど、僕を見て、少しだけ歩み寄って来てくれた。
『王』であるにもかかわらず、気安いのはあちらの生まれだから。
「どうかしたのか?」
凛と通るその声が耳に心地好い。
どこか少女と言うよりは少年の様な王は、自国の官から他国の王まで好ましく思われているのを知っている。
「これ!」
桂桂は己が作った首飾りを、屈んでくれているため同じ高さにある陽子にかけた。
「ありがとう、綺麗だな」
細い糸に数個の丸石と中央に磨いた水晶。
「桂桂が作ったのか?」
「うん」頷きながら答える。
「石は一つ一つ意味があるんだよ。水晶は邪気を追い払ってくれるんだって!」
「へぇ。ありがとう、大切にするね」
「うん。じゃね、陽子。邪魔してごめんなさい」
「あぁ、またな」
ゆっくり話そう、と付け加えてまた戻って言った陽子を見送って自分も歩を進めた。
あぁ、どうか
陽子に悪い虫がつきませんように
そう、願いながら。
END
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